July, 4, 2019, Troy, Riverside--カリフォルニア大学リバーサイド校の研究チームは、前例のない効率で光を量子領域に入れる新技術を開発した。
Nature Photonicsに発表された論文で、化学・環境工学准教授、Ruoxue Yanと電気工学・コンピュータ工学准教授、Ming Liuは、ガラス光ファイバと銀ナノワイヤ集光器(コンデンサ)を統合した、世界初のポータブルで、安価な光学ナノスコピーツールを報告した。デバイスは、高効率往復光トンネルで、可視光を集光器先端に押し込み、局所的に分子と相互作用させ、わかりにくいナノ領域を解読し可視化できる情報を送り返させる。
対象物の細部をクローズアップする能力は、光波長の性質によって制限されている。科学の授業で光学顕微鏡を使ったことがあるなら恐らく、対象物を2000倍程度に拡大できるが、それ以降はすべてがぼけてしまうことを学んでいる。それは、どんなに顕微鏡が進歩しても、光波長の半分よりも微細な特徴、遠視野可視光で数100nm、は区別できないからである。
遠視野波と違い、近接場波は光源に近接して存在し、このルールに支配されない。しかし近接場波は自発的に移動しないので、利用したり観察したりすることは極めて難しい。1920年代以降、研究者は金属膜の微小ピンホールを通るように光を合焦させ、検出可能な光に変換できる近接場が生成すると考えたが、最初のプロトタイプ成功は半世紀後であった。
1990年代早期に、Eric Betzig(2014年ノーベル化学賞)が、イメージング性能と信頼性で最初期のプロトタイプを大きく改善した。それ以来、近接場スキャニング光学顕微鏡は、その技術が知られるにともない、多くの化学、生物学、材料系のナノスケール細部を明らかにするために用いられた。
「設計のカギは、2段連続合焦である。最初のステップでは、遠視野光の波長は、それが細い光ファイバを徐々に進むにつれて、ゆっくりと増加するが、その周波数は変わらない。それが、光ファイバの上部にある銀ナノワイヤで電子密度波と一致するとき、急上昇する。すべてのエネルギーが、電子密度波に移転され、ナノワイヤの表面を進み始める」とYanは説明している。
合焦の第2段階では、その波はチップ先端の数nmに徐々に収縮する。
Sanggon Kimは、 UC Riversideのデバイスを使って、原子を分子にまとめている化学結合を分析できる分子振動の周波数マップを計画している。これは、先端増強ラマン分光(TERS)イメージングとして知られている。TERSは、微弱信号を扱うので、近接場光学顕微鏡で最も困難な部分である。通常は、集光に大きな、百万ドルの装置を必要とする。超解像度画像を得るには退屈な準備が必要になる。
新しいデバイスで、Kimは、簡単なポータブル装置で1nm解像度を達成した。その開発は、あらゆるナノサイエンス分野の研究者に新たな情報の世界を明らかにする見込のある強力な分析ツールになる。
「ファイバナノワイヤアセンブリとTERSの融合に走査トンネル顕微鏡を結合すると、シンプルでエレガントな設定で高解像度の科学画像収集が可能になり、このツールを光学イメージングと分光学の最前線に位置づけることになる。生物学や材料研究など幅広い領域で、その潜在的なアプリケーションに励まされる。今後、科学のさらなる前進が期待できる」とLin Heは話している。
(詳細は、https://news.ucr.edu)