June, 21, 2019, Cambridge--MITスタートアップ、Inkbit、3Dプリンターに「眼と頭脳」を与えることで、従来の制約を克服。
市販のプリンターは一般に、高速、高精度あるいは高品質材料のいずれかを提供するだけである。3つすべてを提供するものは稀であり、工作機械としての有用性が制限されている。現在、3Dプリンティングは,主にプロトタイピングや特殊部品の少量生産に利用されている。
現在、MITスタートアップ、Inkbitは、3Dプリンティングの全ての利点を、これまでプリントされたことがなかった多くの製品にもたらそうとしている。狙いは、量産であるが、そうすると様々な産業で製造工程が根本的に破壊されることになる。
同社は、多材料インクジェット3Dプリンターにマシンビジョンとマシンラーニングシステムを組み合わせることでこれを達成しようとしている。マシンビジョンは、プリントされる対象を層ごとに包括的にスキャンし、リアルタイムで誤差を補正する。一方、マシンラーニングは、その情報を使って、材料の歪んだ挙動を予測し、より正確な最終製品となるようにする。
Inkbit共同創始者/CEO、Davide Mariniは、「会社は、3Dプリンターに眼と頭脳を与えるというアイデアから生まれた」と言う。
Inkbitの工作機にとっては、そのアイデアが幅広いアプリケーションを解放する。同社のプリンターは、これにより他のプリンターよりも柔軟な材料を、はるかに精密にプリントできる。コンピュータチップ、他の電子部品を含め、対象がプリントエリアに置かれると、プリンターは、その周囲の材料を正確にプリントできる。対象が完成すると、そのプリンターは品質保証に使えるようにデジタルレプリカを保存する。
Inkbitは、まだ初期段階の企業。現在、一台の製造グレードプリンターを保有している。しかし、今年後半、プリントした製品の販売を始める。Johnson and Johnsonとパイロットを始める。次の年にプリンターの販売を行う。現在、医療機器、コンシューマ製品、自動車部品を販売する企業からの現在の関心をInkbitが利用できると、同社のプリンターは,今後数年で多くの数十億ドル市場で、製造において主要な役割を担う。歯科のアライナから産業工作機械、睡眠時無呼吸マスクまでである。
MITで、Wojciech Matusikのグループは、研究で、装置の進行を追跡するために簡単な3Dスキャナを使った。Inkbitの最初のプリンターの「眼」を飛躍的に改善するためにOCTを利用することにした。しかし、利用できるOCTは遅すぎて3Dプリント部品の層ごとのスキャンができないので、研究チームは100倍高速のカスタムOCTスキャナを作製した。
一つの層がプリントされスキャンされると、同社独自のマシンビジョンとマシンラーニングシステムは,どんな誤差もリアルタイムで自動補正し、先を見越して、変わりやすい材料の歪みや収縮挙動を補正する。そのプロセスが、同社がプリントできる材料の範囲をさらに広げる。これには、他のプリンターで用いられているローラーやスクレイパーを除去して正確さを保証した。つまり、プリントが難しい材料でこれらを使うと、動かなくなる傾向があるからである。
システムは、ユーザーが同じ装置で新しい物をプロトタイプし、製造できるように設計されている。Inkbitの現在の産業プリンターは、16のプリントヘッドを持ち、多材料部品をプリントする。また,毎年、拳サイズの製品を数十万個製造(もしくは、より大きな製品の比較的少ない数量)できるだけの大きなプリントブロックを持つ。システムの非接触インクジェット設計は、後の反復サイズを増やすことが、プリントブロックの拡大と同じように簡単であることを意味する。
「以前は、多材料プリンターでプロトタイプを造ることができたが、最終製品を実際に製造できなかった」とMatusikは言い、Inkbitの部品の後処理は完全に自動化されていると主張する。「これは、他の製造法を使っていてはできなかったことだ」。
Inkbitのプリンターの新しい能力が意味することは、創始者がプリントしたいと考える材料の中に利用できない物があると言うことである。したがって、同社は製品のパフォーマンスを限界まで押し広げるために独自の化学を作った。プリンティング直前に2つの材料を混合する独自のシステムは、来年同社が出荷するプリンターで利用できる。2つの部分の化学的混合システムにより、同社は、一段と広範なエンジニアリンググレード材料をプリントできるようになる。
Inkbitの戦略的パートナー、Johnson and Johnsonは、最初のプリンターの1台を取得しようとしている。MIT Startup Exchange Acceleratorも、Inkbitを大手企業Amgen、Asics、BAE Systems、Bosch、Chanel、Lockheed Martin、Medtronic、Novartisに紹介する手段になっている。
現在、同社の創始者は、これまでに製品を3Dプリントすることができなかった製品設計チームの教育に多くの時間を費やしている。言うまでもなく、電子コンポーネントを3Dプリントした部品に組み込む。
(詳細は、http://news.mit.edu/)