June, 17, 2019, 東京--住友電気工業株式会社(住友電工)は、イタリアの国立大学・ラクイラ大学と共同で、世界初の実環境におけるマルチコア光ファイバ(MCF)ケーブルのテストベッドをラクイラ市に敷設し、2019年6月6日に落成式を行った。
スマートフォンなどの急速な普及やデータセンターの発達により増大し続ける通信トラフィックに対応するため、現行の光ファイバ通信技術による伝送容量限界を超える技術として、1本の光ファイバの中に複数の光の通り道を設けて信号を伝送する空間分割多重(SDM)と呼ばれる技術の研究が盛んに行われており、その中でMCFはSDM伝送システムを実現する次世代光ファイバとして期待されている。
これまでMCFは実験室環境などで光学特性や伝送特性の評価がなされてきたが、住友電工はラクイラ大学と共同で、世界初となる実環境におけるMCFのテストベッドをラクイラ市に敷設し、良好な光学特性を確認した。テストベッド用に、住友電工は3種類のMCFを提供し、同社とNexans S.A.の合弁会社であるベルギー・Opticable社においてケーブル化が行われた。テストベッドは、6.3kmのMCFケーブルから成り、うち5.6kmはラクイラ市内の共同溝内に敷設され、残りの0.7kmはラクイラ大学の実験室内に配置されて、敷設されたMCFへのアクセスを可能にしている。
ラクイラ市は、2009年4月に大規模な地震に見舞われた。復興に向けた取り組みの一環として、ラクイラ大学はイタリア政府の資金協力を得て、INCIPICTプロジェクトを進めており,このテストベッド敷設はその一環として行われたものである。産学連携した研究により情報通信技術による先進的な都市を目指す計画で、テストベッドにおいても、特にMCFのSDMを用いた機器テストや通信等、幅広い研究開発に活用されることが想定されており、今後光通信技術の大きな発展に貢献することが期待される。
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