May, 30, 2019, Washington--ケース・ウエスタン・リザーブ大学の研究チームは、明るくて刺激的な色を作るために金属を加熱する古代の技術が、完全な光アブソーバとして機能するナノ構造表面を作ることを発見した。完全な光アブソーバ、ある色の99%以上を吸収する材料は、センシング、太陽パネル、偽造防止、ステルス技術に使用できる。
Optical Materials Expressに発表された論文で、研究チームは、加熱された金属表面でどのように色が発生するかについての洞察を報告し、その成果を適用して赤色を完全に吸収するニッケル薄膜を作製した。
「われわれは、3000年の歴史をもつ冶金技術が実際にメタサーフェスの最もシンプルな例の一つであることを発見した。メタサーフェスとは、特有の電磁特性を示すサブ波長特性をもつ人工表面である。単一の金属層を堆積することで色変化を作ると、金属加工術に新たな美的可能性が開ける、またノイズや干渉を起こす電磁信号からデバイスを遮蔽するようなアプリケーションの可能性もある」と研究チームの、Giuseppe Strangiは説明している。
水バブルや蝶の翅の虹色、これらは見る角度によって変わるが、これらとは異なり、金属加熱によって作られる薄い酸化膜は、すべての角度でその色を維持する。これにより、熱誘導の領域がホログラム実現に役立ち、紙幣や金属製品の偽造防止に使える。
シンプルアプローチ
研究者たちは以前、金属上の超薄吸収材料、高度に改良されたナノ構造を利用して完全な光吸収を実証した。とは言え、これらの材料は、少なくとも2つの材料の蒸着を必要とする。これには、高価で時間がかかり、再現性が難しいナノリソグラフィ製造法を利用する。
「酸素と金属基板を適切に組み合わせた単純な薄膜を使うことで、完全光吸収が実現できることをわれわれは示した。この組合せは、われわれがこの研究で用いたニッケルやチタンなど、ある金属で自然に起こる」とStrangiは言う。
その技術を証明するために研究チームは、シリコンに150nmのニッケルまたはチタンを成長させ、次にその膜を400℃で20~40分加熱し、酸化層を作製した。サンプルの吸収特性を分析すると、40分加熱したニッケル膜は、赤色を約99.94%吸収することが分かった。研究チームは、加熱時間を変え、酸化層の厚さを変えることで光吸収は可視光と近赤外波長で調整可能でるかとも実証した。
完全な光吸収は、加熱された金属で起こる。酸化層と金属基板から出る光線が、いっしょになって相殺し合う。全面的破壊干渉として知られる現象である。残りの光は、金属基板内部で吸収される。
「完全吸収を作るこの方法は、簡素で再現性が高いので、非常に実用的である。その酸化層は、表面を傷つきにくくし、さらなる酸化から保護する」とStrangiは説明している。
研究チームは、さらなる実験を行い、高解像度パタンが金属酸化層を成長させることで形成できるかどうかを確認する計画である。また、完全光アブソーバを利用してガスセンサを開発することにも取り組んでいる。