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光パルスを使いエネルギーフリー超高速コンピューティング開発

May, 24, 2019, Lankaster--電気の代わりに光パルスを使う超高速データ処理が開発された。
 この発明は、実質的にゼロエネルギーを消費する磁石を使ってコンピュータデータを記録し、高いエネルギーコストなしでデータ処理速度を高速化するというジレンマを解決する。

今日のデータセンタサーバは、世界の電力消費の2~5%を消費し、サーバの冷却にさらにパワーを必要とする熱を生み出す。
 問題は深刻であり、Microsoftは、数百のデータセンタサーバを海に沈めることさえしている、目的は冷却とコスト削減である。

ほとんどのデータは、微小磁石の方向、つまりスピンで磁気ハードディスクにバイナリ情報としてエンコードされている。磁気読出/書込ヘッドは、電流を使い情報の設定、読み出している。これが膨大な量のエネルギーを消費する。

現在、Natureに掲載された成果では、国際研究チームが、磁石の上の特殊アンテナに集中した極短パルス光で電気を置き換えることによりこの問題を解決した。
 この新しい方法は、超高速であるが、非常にエネルギー効率が優れているので、磁石の温度は全く上昇しない。

研究チームは、遠赤外の周波数、いわゆるテラヘルツスペクトル領域の超短光パルスで磁石にパルスを発生させることでこの新しい方法を実証した。
 とは言え、最強の既存テラヘルツ光源でさえも、これまで、磁石の方向を変えるだけの強力なパルスを供給できなかった。
 ブレイクスルーは、スピンとテラヘルツ電界とを結合する効率的な相互作用機構を利用することで達成された。これは、同じチームが発見したものである。
 研究チームは次に、磁石の上に非常に小さなアンテナを開発、作製した。目的は、光の電界を集中し強化するためである。最強の局所電界は、磁石の磁化を、わずか1兆分の1秒で、新たな方向にナビゲートするには十分である。
 このプロセスは、スピンあたりテラヘルツ光の1量子、フォトンのエネルギーしか必要としないので、磁石の温度は,全く上昇しない。

Lancaster UniversityのDr Rostislav Mikhaylovskiyは、「記録的な低エネルギー損失であるので、このアプローチはスケーラブルである。将来のストレージデバイスは、同時に最大エネルギー効率とスピードで実用的な磁気メモリを可能にするアンテナ構造の優れた空間定義を生かせるようになる」とコメントしている。
 同氏は、Lancaster Universityで新しい超高速レーザを使いはさらに研究を進める計画である。これには、Cockroft Instituteの加速器を利用する。この加速器は、強力な光パスを生成することで、磁石を切替え、磁気記録の実用的、基本的スピードエネルギーの限界を定めることができる。
(詳細は、https://cisweb.lancaster.ac.uk)