May, 22, 2019, 東京--東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所のロレンツォ・カッティ博士研究員、岸田夏月大学院生(物質理工学院 応用化学系 修士課程1年)、吉沢道人准教授らの研究グループは、水中で光刺激に応答する2ナノメートル(nm)サイズのカプセルの作製に成功した。
このナノカプセルは、水に不溶な化合物を内包して水溶化し、また、短時間の光照射で内包物を水中に放出することができる。この成果は、水中で使用可能な“光スイッチ”を持つナノカプセルの最初の例であり、大小様々な化合物の内包と放出が簡便にできることから、生化学や臨床医学の分野での応用が期待される。
ナノメートルサイズのカプセルは、その内部空間に分子を取り込むことで、物性や反応性を変化させることができるため、革新的な材料機能や触媒反応の開発を目指した研究が盛んに行われている。しかしながら、水中で使用でき、様々な分子を取り込むだけでなく、簡単に取り出すこともできるカプセルは未開発であった。
研究では、2つのアントラセン環を含むV型の両親媒性分子を新たに合成し、それらが水中で自己組織化することで、約2nmの球状カプセルが100%収率で形成することを見出した。このナノカプセルは、水に不溶な化合物(ナイルレッドや銅フタロシアニンなど)を内包により効率良く水溶化した。注目すべきは、得られた内包体に紫外光を短時間照射すると、カプセルの骨格変形により内包物を水中に完全に放出できることである。
この研究成果は、Nature Communications誌(Nature姉妹誌)にオープンアクセス論文として掲載された。
(詳細は、https://www.titech.ac.jp/)