May, 9, 2019, College Park--メリーランド大学(UMD)物理学チームが開発した放射性物質検出の新方法は、拡張されて通関手続地でのセキュリティを改善できる。
物質の近くで電子アバランシュブレイクダウンとして知られる現象を誘導するために赤外レーザビームを使うことで、新技術は遮蔽された物質を遠隔から検出することができる。その方法は、放射性物質に接近する必要がある現在の技術を改良する。
さらなる開発進歩により、その方法は拡張が可能で、トラックや入港するコンテナのスキャンに使用でき、隠された,危険な放射性物質の検出に強力なツールを提供することになる。研究成果は、Science Advancesに発表された。
「従来の検出法は、検出器と直接相互作用する放射性崩壊粒子を利用していた。これらの方法は全て、距離とともに感度が低下する。われわれの方法の利点は、本質的に遠隔処理であることだ。さらなる開発により、フットボール場の距離から箱の中の放射性物質を検出できるようになる」とUMD物理学院生、Robert Schwartzは説明している。
放射性物質は崩壊粒子を放出するので、その粒子は空気中の近傍の原子から電子を剥ぎ取る、つまり電離し、少数の自由電子を生成する。これは素早く酸素分子に付着する。赤外ビームをこの領域に集光することで、研究チームは、これらの電子をその酸素分子から簡単に引き剥がし、検出が比較的容易な自由電子を雪崩のように急激に増やすことができる。
「電子なだれは、1個のシード電子で始められる。放射源近傍の空気は、遮蔽したコンテナの外でも、帯電した酸素分子を持つので、強力なレーザ場を印可することで雪崩を起こさせる機会となる。電子なだれは、レーザが発明された後の最初のデモンストレーションだった。これは新しい現象ではないが、放射能検出のアバランシュブレイクダウンを起こさせるために赤外光を使うのはわれわれが初めてである。レーザの赤外波長は重要である、酸素イオンから電子を容易に、特別に引き離すことができるからである。
強い赤外レーザ場を照射すると,ビームに捉えられた電子を振動させ、近傍の原子と衝突させる。これらの衝突が十分なエネルギーになると、原子からさらに多くの電子を剥ぎ取ることができる。
「アバランシュを簡単に見ると、一度の衝突後、2つの電子が得られる。次に、これがもう一度起こると、電子は4個になる。完全電離となるまで全てがカスケードで続く。システム内の原子が少なくとも1個の電子が剥ぎ取られる」とUMDのIREAPのMilchbergは説明している。
レーザパス内の空気が電離し始めると、ディテクタに反射され、後方散乱される赤外光に計測可能な効果が現れる。これらの変化を追跡することで、研究チームは、空気が電離し始めた時、完全イオン化までにかかる時間を判断することができた。
イオン化プロセスのタイミング、つまり電子アバランシュブレークダウンにより研究者は、アバランシュを始めるためにいくつのシード電子が利用できるかを指示できる。この推定は、今度は、ターゲットにどの程度の放射性物質が存在するかを指示できる。
「イオン化のタイミングは、初期電子密度検出の最も敏感な方法の一つである。われわれは比較的弱いプローブレーザパルスを使用しているが、それはチャープである、つまりその短いプローブレーザパルスが最初にアバランシュを透過し、次に長い方が透過する。反射されたものに対比して透過する赤外光のスペクトル成分を計測することで、われわれは、いつイオン化が始まり、その終点に達するかを判断できる」とDaniel Woodburyは説明している。
研究チームは、その方法が極めて特殊で、放射性物質の検出に感度があると指摘している。レーザパルスなしで,放射性物質だけが電子アバランシュを誘導することない。同様にして、放射性物質によって生ずるシード電子なしでレーザパルスだけが、アバランシュを誘導することはない。
その方法は、さしあたり、概念実証の練習にとどまるが、研究チームは、世界中の通関手続地でセキュリティを強化する実用的なアプリケーションを実現する、さらなる技術開発を考えている。
「当座、われわれはラボサイズのレーザで実験しているが、10年程度で、このようなシステムをバンに組み込むことができるようになるかもしれない。どこにでもトラックを止めることができ、そのようなシステムを導入できる。これは、入管手続きをモニタする非常に強力なツールになる」とSchwartzは話している。