April, 26, 2019, つくば--産業技術総合研究所(産総研)物理計測標準研究部門応用放射計測研究グループ 雨宮邦招研究グループ長、井邊真俊 研究員、光放射標準研究グループ 蔀 洋司研究グループ長と、量子科学技術研究開発機構(量研)量子ビーム科学研究部門 高崎量子応用研究所 越川博主任研究員、八巻徹也上席研究員は、微細な表面構造であらゆる光を吸収する、究極の暗黒シートを開発した。
表面を黒色化した材料は、装飾や映像分野などの幅広い用途があり、特に乱反射防止用には、100%に近い光吸収率の材料が求められている。しかし、99%以上の光を吸収する従来の材料は耐久性に乏しく、一般環境での利用が困難だった。今回、シリコーンゴムなどの表面に、あらゆる光をとらえて逃がさない光閉じ込め構造を形成することで、柔軟で耐久性にも優れた究極の暗黒シートを製造する技術の開発に成功した。ポイントとなる光閉じ込め構造は、サイクロトロン加速器からのイオンビームの照射と化学エッチングにより、ポリマー表面に微細な円錐状の空洞構造を多数形成することで実現した。これを原盤としてシリコーンゴムに転写作製した暗黒シートは、紫外線~可視光~赤外線の全域で99.5%以上の光を吸収し、特に熱赤外線に対しては99.9%以上という世界最高レベルの光吸収率を達成した。これまでにない美しい黒が映える新素材としての活用や、映像のコントラスト向上のほか、サーモグラフィーなどでの熱赤外線の乱反射防止といった応用も期待される。
この技術の詳細は、Journal of Materials Chemistry Cにオンライン掲載された。
(詳細は、https://www.aist.go.jp/)