April, 26, 2019, Washington--カルコゲナイドガラスの3Dプリンティングは、通信やセンシングアプリケーション向けの複雑な光コンポーネントのローコスト製造を可能にする。
カナダ、Université LavalのCentre d’Optique、Photonique et Laser (COPL)の研究チームは、初めてカルコゲナイドガラスの3Dプリントに成功した。カルコゲナイドは、中赤外波長で動作する光コンポーネント作製に使用される独特の材料。このガラスを3Dプリントできると、新しい種類のローコストセンサ、通信コンポーネントやバイオメディカルデバイスなど、複雑なガラスコンポーネントや光ファイバの製造が可能になる。
COPLの研究者、Patrick Larochelleのチームは、商用3Dプリンターをガラス押出に変える方法を説明している。新方法は、一般に利用されている熱溶解積層法をベースにしている。この方法では、プラスチックフィラメントが溶かされ、層ごとに押し出されて精密3D物体を作る。
「光学材料の3Dプリンティングは、将来のフォトニックコンポーネントやファイバを製造する材料設計や組合せに新たな時代を開く。この新方法は、赤外光コンポーネントのローコスト、効率的製造でブレイクスルーとなる可能性がある」と研究チームの一人、Yannick Ledemiは話している。
カルコゲナイドガラスは、他のガラスと比べて比較的低温で軟化する。研究チームは、商用3Dプリンターの最大押出温度を260℃から330℃程度に高め、カルコゲナイドガラス押出ができるようにした。チームは、通常3Dプリンターで使用されている商用プラスチックフィラメントと同様の寸法でカルコゲナイドガラスフィラメントを作製した。最後に、プリンターをプログラムして、複雑な形状と寸法の2つのサンプルを製造できるようにした。
「われわれのアプローチは、ソフトカルコゲナイドガラスに非常に適しているが、他のタイプのガラスをプリントするための代替アプローチも研究されている。これにより、多材料製コンポーネントの製造が可能になる。ガラスは、特殊な電気伝導、あるいは光学特性のポリマと組み合わせて、多機能3Dプリントデバイスを作ることもできる」とLedemiはコメントしている。
3Dプリンティングは、複雑な形状、多材料、その両方の組合せで、ファイバプリフォーム作製にも有用である。設計と製造技術が微調整されると、研究チームによると、3Dプリンティングは赤外ガラスコンポーネント、あるいはファイバプリフォームの安価な量産に利用できる。
「3Dプリントされたカルコゲナイドベースのコンポーネントは、防衛やセキュリティアプリケーション向け赤外サーマルイメージングに利用できる。また、センサを汚染物質のモニタリングに使用できる。さらに分子の赤外化学的指標が検出や診断に使用されるバイオメディカル、他のアプリケーションにも使用できる」と同氏は続けている。
現在、研究チームは、そのパフォーマンス向上のためにプリンターの設計改善に取り組んでいる。これにより、カルコゲナイドガラスでできた複雑な部品やコンポーネントの積層造形が可能になる。また、新しい押出器を追加して多材料コンポーネントの開発に向けてポリマとのコ・プリンティングを可能にしたいと考えている。