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高温動作プラズモンの狙いは太陽電池とデータストレージ

April, 23, 2014, West Lafayette--高温動作の新しい「プラズモンメタマテリアル」は、太陽電池のパフォーマンスを劇的に改善し、磁気ディスクに熱を使って情報を記録する最先端のコンピュータデータ蓄積技術を可能にする。
 この材料で、表面プラズモンという一群の電子を利用して光を操作し制御できる。しかし、開発中のプラズモンコンポーネントには金や銀などの金属に依存するものがあり、これらは高温耐性がない。また、これらはIC製造に使われるCMOSプロセスに適合しない。
 パデュー大学(Purdue University)の研究グループは、金と銀を窒化チタンや窒化ジルコニアと置き換えようとしている。
 研究グループのポスドク研究員、Urcan Guler氏によると、これらの材料は、高効率とハイパフォーマンスに必要な高い動作温度で安定的である。
 メタマテリアルは表面設計が変わってきている。表面には微小なアンテナ、窒化物の交互層などのパタン、素子があり、前例のない光制御が可能になっている。約15年の開発で、メタマテリアル固有の潜在力はナノメートルスケールでできる精巧なデザインによるものである、と説明されている。
 研究グループは今回、高温を利用して優れた効率を達成する新しいプラズモン技術を発見した。ただ、障害となっているのは、高効率デバイスに必要な動作温度が1500℃近辺であると推定されることである。窒化チタンと窒化ジルコニアが耐熱性があると言われており、これらは融点が高く、2000℃を超える高温で化学的安定性がある。
 これらの材料は、太陽光発電の熱光起電力に使える可能性がある。ここでは、プラズモンメタマテリアルの超薄層が太陽電池の効率を飛躍的に向上させると見られている。現在の太陽電池は約15%の効率だが、ソーラ熱光起電力を用いると理論的には効率は85%まで向上する。プラズモン層は薄い「中間スペクトルコンバータ」として働き、太陽光のスペクトル全体を吸収し、太陽電池を照射する、とGuler氏は説明している。
 このスペクトルコンバータは、プラズモンナノアンテナを使用した極薄のメタマテリアルで、太陽光を吸収し放出する。層の薄さは500nm、人の髪の毛の1/100程度だ。材料のこの層は、太陽光に熱せられると約1500℃になる。
 従来の研究では、タングステンやタンタルなどの耐熱金属を利用して研究していたが、これらはプラズモン材料に適していない。これらの材料の層は、プラズモンメタマテリアルでできるよりも20倍厚くなり、ソーラ熱光起電力デバイスの絶えず続く膨張-収縮による機械的応力に弱い。もう1つの優位性は、薄い層は質量が小さいので直ぐに温度が上昇することだ。
 高温プラズモンメタマテリアルによって研究グループは、熱アシスト磁気記録(HAMR)Dドライブというコンピュータデータストレージの新たな形態を完成させることができる。これは、現在の技術よりも遙かに大容量になる見込がある。しかし課題は超高温に耐える材料からナノアンテナを作ることであり、コンピュータのハードドライブ動作による機械的な要求に持ちこたえられることである、と同大学Birck ナノテクノロジーセンタのナノフォトニクス科学ディレクタ、Vladimir M. Shalaev氏は説明している。
 「アンテナは、高速回転し約400℃になるディスクのそばにある。このような条件下でナノ構造の変形を防ぐことは難しい」(Shalaev氏)。
 臨床治療的には、腫瘍に蓄積する目的で窒化チタンナノ粒子を血流に注入することが考えられている。医師が体外から、ある波長でこれらのナノ粒子を照射し、粒子を加熱して癌細胞を殺すようなことが考えられる。
(詳細は、www.purdue.edu)