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LED逆走が将来のコンピュータ冷却に効果

March, 27, 2019, Ann Arbor--ミシガン大学の研究チームは、物理学の一般的な考えに対して逆に走るという研究成果で、わずか数ナノメートル離れた別のデバイスを冷却するために、電極を逆にしたLEDを動作させた。
 そのアプローチは、将来のマイクロプロセッサに向けた新しい固体冷却技術につながる。マイクロプロセッサは、小さなスペースに非常に多くのトランジスタを詰め込んでいるので現在の方法は、十分に素早く除熱できない。
 機械工学教授、Pramod Reddy氏は、「デバイス冷却にフォトンを使う第2の方法を実証した」と言う。
 第1の方法は、レーザ冷却分野で知られており、これは2018年ノーベル物理学賞を受賞したArthur Ashkin氏の基本的な研究成果である。
 研究チームは、それよりもむしろ、熱放射の化学ポテンシャル利用した。例えば、バッテリ動作方法の説明に一般に用いられるコンセプトである。
「今日でも、放射の化学ポテンシャルはゼロと考える人は多い。しかし、1980年代に遡る理論は、ある条件下では、これは事実ではないことを示唆している」とMeyhofer氏は言う。

例えば、バッテリ内部の化学ポテンシャルは、デバイスに入ると電流を活発にする。バッテリ内では、金属イオンが一定のエネルギー、つまり化学ポテンシャルエネルギーを放出するので、金属イオンは他方へ流れたがる。われわれはそのエネルギーを電気として利用する。電磁放射は、可視光、赤外熱放射を含め、一般にこの種のポテンシャルを持たない。

「通常熱放射では、強度は温度にだけ依存するが、われわれは実際には、この放射を制御するノブを持っている、それがわれわれが研究している冷却を可能にする」とLinxiao Zhuu氏は説明している。同氏は、論文の筆頭著者、機械工学フェロー研究者。
 そのノブは電気的である。理論的に、赤外LEDのプラスとマイナスの電気接続を反転させることは、その発光を止めるだけでなく、実際には、室温という理由だけで、それが生成している熱放射を抑制する。
「LEDは、この逆転バイアスの仕掛けで、温度が下がったかのように振る舞う」とReddy氏は言う。
 とは言え、この冷却の計測、さらになにか興味深いことが起こっていること証明することは、恐ろしく複雑である。

 物体から十分な赤外光をLEDに流すには、その2つが極めて接近していなければならない、赤外光の1波長以下に接近していなければならない。これは、「ニアフィールド」つまり「エバネセント結合」効果を利用する必要がある。これによって、赤外フォトンが冷却されるべき物体からLEDに入り込む。

研究チームは、すでにナノスケールデバイスの加熱と冷却を行ったので一歩先んじており、それら数十ナノメートル離れるように設置した。この近接近で、冷却されるべき物体から逃れられないフォトンがLEDに入り込む、あたかも両者の間にギャップが存在しないかのようである。研究チームは、超低振動研究所を利用できる。ここでは、ビルの人の跫音からの震度などが飛躍的に減少するので、ナノメートル離れた物体の計測は実行可能である。

研究グループは、微小カロリーメータを作製してその原理を証明した。カロリーメータは、エネルギーの変化を計測するデバイス。それを米粒ほどの微小LEDの直ぐ隣に設置した。これら2つは、相互に,環境のどこであろうと、絶えず熱光子を放出、受け取っていた。
「室温にあるどんなものでも光を放出している。暗視カメラは、基本的に、温かい物体からの赤外光を捉えている」(Meyhofer)。
 しかし、LEDを逆バイアスに接続すると、それは極めて低い温度の物体として機能し、カロリーメータからのフォトンを吸収する。同時にそのギャップで熱は、伝導によってカロリーメータに逆流できなくなり、冷却効果が生ずる。
 チームは、6W/㎡の冷却を実証した。理論的に、この効果は、1000W/㎡,地球表面上の太陽光相当の冷却である。
 これは、将来のスマートフォンや他のコンピュータにとって重要であることが分かる。ますます小型になっていくデバイスのコンピューティングパワーでは、マイクロプロセッサからの排熱が、所定のスペースに圧縮できるパワーを制約し始める。
 この新しいアプローチの効率と冷却率の向上により、チームはこの現象を、デバイスのマイクロプロセッサから迅速に除熱する方法と考えている。スマートフォンの使いすぎにも耐えると考えられる。ナノスケールのスペーサがマイクロプロセッサとLEDを分離するからである。

研究成果は、Natureに発表された。
(詳細は、https://news.umich.edu)