February, 19, 2019, 和光--理化学研究所(理研)光量子工学研究センターテラヘルツ量子素子研究チームの林宗澤研究員、王利特別研究員、王科研究員(研究当時)、平山秀樹チームリーダーらの共同研究チームは、「非平衡グリーン関数法」に基づく第一原理計算を用いて、「テラヘルツ光」を光源として用いる「テラヘルツ量子カスケードレーザ」の高出力化および高温動作性能の向上に成功した。
研究成果は、イメージングや短距離超高速大容量無線通信に向けた半導体レーザへのテラヘルツ光の応用に貢献すると期待できる。
テラヘルツ量子カスケードレーザには高出力、連続動作、狭線幅などの特長があるものの、動作温度は最高でも199.5K(-73.65℃)と低く、室温での動作にはまだ至っていない。
今回、共同研究チームは、非平衡グリーン関数法に基づいた第一原理計算によって、テラヘルツ量子カスケードレーザの発光層構造における電子密度分布・電流分布・光利得を直接計算する方法を開発し、これらが液体ヘリウム温度(4K、-269℃)から室温までの間でどのように変動するかをシミュレーションした。これにより、従来の構造設計では定量化が難しかった、上位発光準位から発光過程に直接寄与しない遠距離の高エネルギーサブバンド準位への「リーク電流」の存在を発見し、高出力動作および高温動作に対するこのリーク電流の影響を解析した。また、このリーク電流を抑制する新たな構造のデバイスを設計・作製し、液体窒素温度(77K、-196℃)での高出力化を実現した。
研究成果は、応用物理学会のオンライン科学雑誌『Applied Physics Express』(2018年10月4日付け)に掲載された。
(詳細は、http://www.riken.jp)