April, 18, 2014, Los Alamos--ロスアラモス国立研究所の研究チームが、イタリアのミラノ大学の研究者と協力して先頃実現した量子ドットの研究成果により、ソーラパネルとして二重化した住宅の窓が商用化される見通しになっている。このプロジェクトは、より効率的に太陽光の集光に寄与することによって、量子ドットの優れた発光特性を太陽エネルギーに生かせることを示している。
「重要な成果は、新しい世代の特殊設計量子ドットを利用した、大面積発光性ソーラコンセントレータの実証である」(ロスアラモス先端太陽光物理学センタ主任研究員、Victor Klimov氏)。
量子ドットは、膠質化学の最新法を利用してほぼ原子サイズで合成できる半導体超微細粒子。その発光色は、その大きさを変えるだけで調整できる。色のチューナビリティは、100%に近づく高い発光効率と結びついている。これらの特性は、新しい技術、量子ドットディスプレイの基盤になっており、最新世代のKindle Fireに用いられている。
太陽電池用発光型集光器(LSC)はフォトンマネージメントデバイスであり、色素分子や量子ドットのような高効率エミッタを含む透明材料スラブの典型である。スラブに吸収された太陽光は、より長い波長で再放出され、太陽電池を設置したスラブ端に導かれる。
「LSCは集光アンテナとして働き、広い範囲から集めた太陽光を遙かに小さな太陽電池に集光し、これによって出力を強める」とKlimov氏は説明している。
「LSCは特に魅力的である、その理由は利得効率がよいことに加えて、太陽電池ウインドウのような新しい興味深い考えが実現できるからだ。太陽電池ウインドウは、家の前面を大きなエネルギー生成ユニットに変えることができる」(元研究員、現在ミラノ・ビコッカ大学(UNIMIB)Sergio Brovelli氏)。
高い効率、色調整発光、溶液加工性のために量子ドットは安価な大規模LSCでの利用には魅力的な材料であるが、1つ課題がある。ドットの出力バンドと吸収バンドが重なることである。ドットが、生成した光の一部を再吸収するために、大きな光損失となる。
この問題を解決するためにロスアラモスとUNIMIBの研究チームは、発光バンドと吸収バンドを人工的誘発により大きく離した(大きなStokesシフト)量子ドットベースのLSCを開発した。
「ストークスシフト」設計したこの量子ドットは、セレン化カドミウム/硫化カドミウム(CdSe/CdS)構造。光吸収は極薄CdS外殻が支配しており、一方、発光はナローギャップCdSeの内核から起こる。ナノ構造の2つの異なる部分間で光吸収と光放出機能を分離したことで、吸収に対して放出のスペクトラルシフトが大きくなっている。これは再結合による損失を大幅に減らすことになる。
この考えを実行するために、ロスアラモスの研究チームは、一連の厚い殻(いわゆるジャイアント) CdSe/CdS量子ドットを作製し、これをイタリアの研究パートナーが大きな(数10㎝)PMMAスラブに組み込んだ。量子ドット標準からすると大きくなるが、活性粒子はまだ小さく、径はわずか100オングストロームしかない。
UNIMIB材料科学部で開発した修正産業用セルキャスト法を用いたことが今回の成功の鍵になる、とUNIMIB物理学教授、Francesco Meinardi氏は説明している。
分光計測によって、数10㎝の距離では再吸収による損失が実質的にないことが示された。さらに、太陽照射シミュレーションを用いたテストは、ほぼ透明のサンプルで達成可能な、吸収フォトンあたり約10%の高いフォトン収集効率が実証された。PVウインドウとして利用するには最適であることが示された。
高い透明性にもかかわらず、作製した構造は、4を超える集光比で太陽束を大幅に強化している。これにより「ストークスシフト設計」量子ドットは、有望な材料プラットフォームであることが示された。これは、独立に放出スペクトラムと吸収スペクトラムを調整した、溶液加工大面積LSCの実現可能性も示している。
(詳細は、www.lanl.gov)