April, 18, 2014, Singapore--シンガポール国立大学(NUS)科学学部化学部准教授、Christian A. Nijhuis氏は、A*STARの研究グループ、HPC研究所Dr Bai Ping氏、材料研究&工学研究所の博士、Michel Bosman氏と協力して、数100THzの周波数で動作する電気回路を開発した。これは、今日の最先端のマイクロプロセッサよりも数万倍高速。
この新しい開発では、「量子プラズモニックトネリング」という新しい物理過程を用いる。分子電子デバイスの分子を変えることで、回路の周波数を数100THz領域に変えることができる。この新しい回路は将来、超高速コンピュータあるいは単一分子検出器の作製に使える可能性があり、ナノエレクトロニクスデバイスで新たな可能性を開くものであると研究グループは主張している。
光がある金属と相互作用し、プラズモンの形で取り込めることが知られている。これは、ナノスケールで操作できる電子の集合的、超高速振動となる。いわゆる量子プラズモンモードは、原子長スケールで起こることが理論的に予言されている。しかし、現在の最先端の製造技術では、5nm程度長いスケールでしか製造できず、量子プラズモン効果を研究することは難しかった。
この画期的な研究では、研究チームは実際のアプリケーションに使える長さスケールで量子プラズモニクスが可能であることを実証した。研究チームは、2つのプラズモン共振器を用いて分子電子回路素子の作製に成功した。これらの共振器は、光をプラズモンの形で取り込み、正確に1分子の分子層によってブリッジする構造になっている。分子層は、量子プラズモニクストンネル効果に基づいてスイッチし、その回路はTHz周波数で動作できる。
博士のBosman氏は、最先端の電子顕微鏡技術を使って、ナノメートルの解像度でこれらの構造の光電子特性を可視化し、計測した。計測によって、量子プラズモンモードが存在すること、デバイスの分子特性を変えることでそのスピードを制御できることが分かった。
量子補正されたシミュレーションを用いて博士のBai氏は、現在のプロセッサよりも10000倍速い周波数で動作する量子電子デバイスの量子プラズモン特性が制御可能であることを確認した。
この研究成果の意義についてNijhuis准教授は、「理論的、実験的に、光周波数における超高速スイッチングが分子エレクトロニクスデバイスでも可能であることを研究チームが実証したのは今回が初めてである」と語っている。
この研究成果は、ナノエレクトロニクスと高速動作の光部品を組み合わせるプラズモニック-エレクトロニクスに向けた新たな設計法に道を開く可能性を示している。
(詳細は、www.science.nus.edu.sg)