January, 30, 2019, Washington--デューク大学の研究チームは、マルチカラーホログラフィへの新たなアプローチを開発した。これは、拡張現実グラス、スマートフォン、HUDディスプレイで、大きな光学部品を使うことなく3Dカラーディスプレイ実現に利用できる。
Opticaに発表された研究成果は、2D導波路構造に300×300µmホログラムをエンコードする方法を説明している。コンピュータで生成されたホログラムは、グレーティングカプラが赤、緑、青色光で照射されると、複雑なマルチカラーホログラフィック画像を作り出す。
「ホログラムは、ARグラスのレンズに直接浮き出され、眼の瞳に直接画像を投影する。大きなレンズ、ビームスプリッタあるいはプリズムを使う必要がない。これは、スマートフォンからの3D画像を壁や近くの表面に投影するためにも使用可能である」と研究チームのDaniel L. Marksは説明している。
新しい製法は、集積フォトニクス技術に適合する材料にホログラムをエンコードする。つまり、ホログラフィックデバイスは、コンピュータチップ製造に利用されている同じ製法で簡単に量産される。ホログラムを生成する素子は、3D画像を生成するために必要な光源を内蔵した微小なチップベースデバイスに組込可能である。
新しいマルチカラーホログラフィ技術は、コンピュータ生成ホログラムをベースにしている。従来のホログラフィでは、ホログラフィック画像の形成に必要な干渉パタンを作る物理的実体とレーザビームが不可欠であるが、これとは異なり、コンピュータ生成ホログラフィは、デジタル的に干渉パタンを生成する。
コンピュータ生成ホログラムは、高解像度3D画像であるが、一色以上で生成することは、困難であった。デュークの研究チームは、フォトレジストとして知られる感光材料でできた導波路にグレーティングとバイナリホログラムを造ることで、この課題を克服した。チームは、赤、緑、青の干渉パタンを単一のバイナリホログラムパタンに組み込む方法を開発した。
「マルチカラーディスプレイ作製で難しい部分の一つは、色を統合し、次にそれを精密に分離してフルカラー画像を生成することである。われわれのアプローチでは、これは全て単一表面で一気にできる、ビームスプリッタ、プリズムは不要である。これにより、ポータブルデバイスへの組込が極めて容易になる」と論文の筆頭著者、Zhiqin Huangは説明している。
もう1つの重要な成果は、導波路構造にホログラフィックデバイスを作製することだった。「マルチカラーコンピュータ生成ホログラムを実現しようとしていた他の研究者は、導波路を使わなかった。そのため、その構造をデバイスに組み込むことが困難であった。われわれの設計は、ARや他のディスプレイに十分なフォームファクタで簡単な,一段と柔軟な組込を可能にしている」と研究チームリーダー、David R. Smithは話している。
研究チームは、この新しいホログラフィ法を使って、リンゴ、花、鳥の静的マルチカラーホログラムの干渉パタンをエンコードした。結果として得られたホログラフィック画像は全て、理論的予測によく一致していた。デモ用に非常に小さなホログラムを作製したが、研究チームによると、同技術は大型ディスプレイ作製用に簡単に拡張できる。また、そのアプローチは,LCDを造るために使われているような既存技術に組み込んで、動的画像を作ることができる。
研究チームは現在、ホログラムをエンコードする構造による光損失を減らし、その技術を最適化することに取り組んでいる。また、その技術を実用化するには、レーザを備えた単一集積デバイスにその構造を組み込むことが必要である、と研究チームは指摘している。