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NIST、フォトニック放射線センサ、高放射能量で損傷なく存続

January, 28, 2019, Gaithersburg--NIST研究チームは、有望な種類のセンサが高放射線環境で使えることを示唆する画期的な試験結果を発表した。また、それは重要な医療、産業および研究アプリケーションを前進させるものでもある。
 フォトニックセンサは、電流の代わりに光で情報を伝達する。このようなセンサは、一般に光ファイバを使って、フォトンの流れを計測、伝達、操作でき、また圧力、温度、距離、磁場、環境条件などを計測するために使用される。
 それらは、小サイズ、低電力消費、機械的振動などの環境変数への耐性のために魅力的である。しかし一般には、高い放射能レベルがシリコンの光学特性を変え、読み取りが不正確になると考えられてきた。
 NISTは、これらの問題に対処するプログラムを発表した。テスト結果は、産業アプリケーションや病院の放射線治療における放射線量計測用にカスタマイズできることを示している。
研究成果は、Nature Scientific Reportsに発表されている。
 特に、NISTの成果は、センサを使ってイオン化放射レベル(原子構造を変えることができる高エネルギー)監視に利用可能であることを示している。すなわち、滅菌、医療器具の殺菌に利用可能である。これは、米国だけで、推定で年間70億ドルの市場である。そのようなセンサは、医療イメージングや治療でも潜在的アプリケーションがあり、2022年までには世界的に年間総額500億ドルと見積もられている。
 また、プロジェクト研究者Zeeshan Ahmedによると、放射線障害が大きな懸念である原子炉付近など、苛酷環境で正確に機能するフォトニックセンサ導入に対する関心が高まっている。
 宇宙産業は、このようなセンサの高放射線環境における機能にも関心を示している。プロジェクト研究者、Ronald Toshは、「この研究では、一定種類のデバイスや放射線では、損傷は無視できるレベルであることが示されている」と説明している。
 Photonic Dosimetryプロジェクトリーダー、Ryan Fitzgeraldによると、酸化物被覆シリコンフォトニックデバイスは、100万グレイまでの放射線露光に耐えられることが明らかになっている。1グレイは、質量1グラムによって吸収される1ジュールのエネルギー、1グレイは10000回の胸部X線相当である。これは、ほぼ、センサが原子力発電所で受ける量である。
 「カスタマーが気にしているのは、われわれのキャリブレーションの上限である。デバイスは、産業あるいは医療放射線レベルでは確実に機能すると考えられる。これは、数百倍、あるいは数千倍低いレベルである」とFitzgerald。例えば、食品照射は、数百~数千グレイであり、アラニン沈殿物、イオン化放射を受けたときに原子特性を変えるアミノ酸に対する効果が一般的にモニタされている。
 放射線の影響を測定するためにNIST研究チームは、2種類のシリコンフォトニックセンサをコバルト60から数時間ガンマ線露光させた。両方のタイプのセンサで、その物理的特性の小さな変動が、それらを透過する光波長を変える。その変化を計測することでデバイスは、高感度温度計あるいは歪ゲージとして使える。これは、宇宙飛行や原子炉のような苛酷環境でも忠実である。ただし、イオン化放射を受けて適切な機能を続ける限りにおいてである。
 Fitzgeraldによると、これらのフォトニックデバイスは苛酷な放射線環境においてもロバストであることを結果は示しており、したがって照射を受けたデバイスの物理特性に関するその効果を利用して放射線計測にも利用可能である。
 臨床医学の強い関心も引くことになる。ここでは、健全な組織への影響を回避するために、電子、プロトン、イオンビームを含め、最小レベルの照射を最小領域に集光することでガンや他の条件の処置を行っているからである。
 その目標達成には、極めて高感度で高い空間分解能の放射線センサが必要になる。「最終的に、われわれは、産業用および医療用アプリケーション向けにチップスケールデバイスを開発したい。マイクロメートル範囲の距離で吸収線量勾配が確定でき、したがって前例のない詳細な計測ができるものである」とプロジェクト研究者、Nikolai Klimovは話している。
 研究チームの成果は、新しい医学的治療プロセスに大きな影響を与えるかも知れない。これは、極狭ビームあるいはカーボンイオンや低エネルギー電子ビームを使う医療滅菌プロセスを利用する。「われわれのセンサは、もちろん、小さく、チップサイズである。現在の線量計はミリメートルからセンチメートルのオーダーであり、そのような寸法で変化する領域では誤読み取りの可能性がある」ととFitzgeraldはコメントしている。
 研究の次の段階では、研究チームはセンサアレイをテストする。
(詳細は、https://www.nist.gov)