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原子時計で光電効果の絶対的タイミングを計測

January, 22, 2019, Vienna--ウィーン工科大学(Vienna University of Technology)による精緻な実験と計算の助けを借りて、有名な光電効果の時間幅の計測が可能になった。
 それは量子物理学では極めて重要な実験の1つであった。光がある物質に当たると、電子がその表面から放出される。アルバート・アインシュタインが、1905年に初めてこの現象を説明した、当時彼は「光量子」と言っていたが、光の最小単位を今ではフォトンと言う。
 一秒のほんのわずかな時間で、材料の電子はフォトンを吸収し、他の状態に「ジャンプ」し、その表面から離れる。この「光電効果」は非常に高速であるので、これまではほとんど瞬間、状態の突然の変化と見なされていた。しかし、新しい計測法は、そのようなプロセスを計測し、その時間幅を正確に計測できるほどに正確である。ウィーン工科大学のチームは、他の研究機関とともに、タングステン表面の光電効果の時間幅を究明した。この成果は、Natureに発表されている。
 光電効果は、多くの技術分野で重要な役割を果たしている。例えば太陽電池、光ファイバケーブルのデータの電気信号への変換など。それはアト秒の範囲で起こる。
 「超短パルスレーザにより、近年、そのような効果の時間幅を知ることが初めて可能になった。例えば、多様な量子飛躍間の時間間隔を計測し、異なる量子飛躍にかかる時間が違うことを示せる」とウィーン工科大学理論物理学研究所、Joachim Burgdörfer教授は説明している。しかし、これまでは時間差を計測できただけで、絶対的時間幅は計測できなかった、量子飛躍の始まりで正確に時を刻み始める「クロック」を見つけることが非常に難しいからである。これは正に、いくつかの実験、コンピュータシミュレーションおよび理論的計算の組み合わせにより可能になったものである。
 
3つの原子時計
 これを達成するために研究チームは、一歩ずつ進まなければならなかった。絶対的に高精度校正された参照スケールを得るために、最初に、レーザパルスによってヘリウム原子から取り出した電子を観察した。「ヘリウム原子は非常にシンプルである。この場合、われわれは光子放出の時間発展を正確に計算できる。もっと複雑なもの、例えば金属表面では、世界最高のスーパーコンピュータでもできない」とChristoph Lemell教授は説明している。
 ヘリウム原子は、次の参照クロックとして使用された。第二の実験で、ヘリウムとヨウ素の光子放出を比較し、「ヨウ素クロック」を校正した。最後に、第三の最終ステップで、ヨウ素原子を使って、タングステン表面からの電子の光子放出を観察した。これが、研究チームが計測したかった効果である。ヨウ素原子は、タングステン表面に堆積され、次に超短パルスレーザを当てた。ここでは、ヨウ素原子は、参照クロックとして働き、これによってタングステン表面からの光子放出を計測することができた。
 超短パルスレーザは、プロセスが始まる出発信号として利用される。電子は、その原子から放出され、異なる量子状態に「ジャンプ」し、そこで電子はタングステン表面に到着し離れる。「タングステンでは、物質の界面が、そこで非常に正確に定義できるので、このプロセスの時間幅を特によく観察できる。タングステン表明は、電子の-時間計測の優れたフィニッシュラインである」とFlorian Libisch教授は説明している。
 光子放出過程の時間幅は、電子の初期状態に依存する。タングステン原子の内殻からの電子で100アト秒から、伝導帯電子の45アト秒の範囲である。これは平均して、もっと速くフィニッシュラインを通過する。計測は、ガーヒングのマックスプランク量子オプティクス研究所でおこなわれた。理論的作業とコンピュータシミュレーションは、ウィーン工科大学、Florian Libisch, Christoph Lemell and Joachim Burgdörferが担当した。

 とは言え、研究プロジェクトの目標は、単に量子効果の時間幅計測ではない。「表面物理学、物質内の電子伝達プロセスの新たな洞察などの研究分野が考えられる。数年前なら考えられなかったような正確さで重要な物理過程を研究するチャンスが得られる」とJoachim Burgdörferは話している。
(詳細は、https://www.tuwien.ac.at)