January, 15, 2019, Eindhoven--アイントホーフェンの研究チームは、全方向に発光する新しいタイプの省エネ、ナノスケールレーザを開発した。その全方向発光へのカギは、ナノテクノロジーでは通常、極めて望ましくないものの導入である。つまり材料の不規則性である。研究チームは、広範な潜在的アプリケーションがあると見ているが、まずは、その基礎研究は、他の研究者による、さらなる改善、理解の深化を促進すると考えている。
システムの反応を決定する変数のコントロール欠如は通常、科学や技術では害悪と見なされる。とは言え、わずかな不完全性や不規則についてはどうだろうか。ナノ製造プロセス制御レベルに限界があるため、不完全性と不規則は、ナノサイエンスでは不可避である。不規則性は潜在的に、ナノシステムにとって致命的であるが、十分に抑制された不規則性は、最終的には邪魔にはならず、新たな物理的コンセプトやアプリケーションにつながる。
Eindhoven University of Technology (TU/e) およびDutch Institute for Fundamental Energy Research (DIFFER)の研究チームは、Physical Review Lettersに研究成果を発表し、不完全性と不規則性のナノレーザにおける役割の研究を報告した。わずかな不規則性を導入することで研究チームは、劇的な変化を観察した。レーザは、もはや特定の一方向に発光することはなく、あらゆる方向に発光する。
ナノスケールレーザの開発は、非常に活発な研究分野である。通常のレーザでは、個々のフォトンがキャビティ内の媒体中で何度も「クローン」される(一対のミラーの間で、フォトンが前後に動いて同じ特性の他のフォトンを生成)。このプロセスは、励起誘導放射による光増幅(LASER)として知られている。レーザ発光を達成するために、通常は媒体を通して電流を注入、あるいは高エネルギー光で媒体を照射する。レーザ発光に必要な最小エネルギーは、レーザ閾値として知られている。
レーザの他の種類には、いわゆるポラリトンレーザがある。これの動作原理は、フォトンクローンを作るのではなく、水蒸気分子と同様に非同一フォトンを作る。つまり、様々な速度であらゆる方向に動き、凝縮されてシングルドロップになる。フォトンの凝縮は、レーザの強度と指向性発光特性となる。ポラリトンレーザの需要な利点は、発振しきい値が非常に低いことである。これは、多くのアプリケーションにとって優れた候補になる。
とは言え、ポラリトンレーザの主要な問題は、低温動作が必要なことであるが、有機材料を使うことで、環境温度でもポラリトンレーザの発光は可能である。研究チームは、以前に、環境温度で機能するナノスケールポラリトンレーザを実証した。これは、通常のレーザのミラーの代わりに金属ナノ粒子を使った。
TU/e-DIFFER研究チームは、新しい種類のポラリトンレーザを見いだした。これは、銀ナノストライプの規則的パタンで構成されている。その銀ナノストライプは、染料が有機発光分子で構成された、カラードPMMAポリマで覆われている。しかし、銀ストライプには、意図的にある程度の不完全性と不規則性を持たせてある。この不完全ナノレーザからの発光は全方向であり、主に有機分子の特性によって決まる。この結果は、凝縮というフレームワークでは期待できない。全方向発光は、凝縮に一般的な、集合的発光ではなく、独立した有機分子からの発光を必要とするからである。全方向発光の実証は、環境温度におけるナノスケールレーザの開発に新たな境界を定めることになる。
研究チームは、開発したレーザが、最終的には、多くの分野に適用されると考えている。LEDと比較して、全方向レーザ光は、遙かに高輝度であり、明確に定義されている。それが顕微鏡照明のふさわしい候補になる理由である。顕微鏡照明には現在、LEDが使われている。LiDARは、またもう1つの潜在的アプリケーションである。現在のLiDARは、1個以上のレーザと一連の高速動作ミラーを使って、広いエリアをカバーして遠くの対象物を撮像している。全方向レーザは、可動ミラーを必要としないので、複雑さが大幅に低減する。また、Jaime Gomez Rivas教授によると、一般照明はオプションである。「とは言え、研究はまだ非常に初歩的である。われわれの成果が、他の研究者を刺激して、さらにレーザ閾値を下げ、発光色範囲を広げることでレーザが改善されることを希望している」と研究リーダー、同教授はコメントしている。