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ダイヤモンドからの閃光:ダイヤモンドを用いた固体量子系からの超放射を実現

December, 10, 2018, 東京--オーストリアのウィーン工科大学(TU Wien)、国立情報学研究所(NII)、日本電信電話株式会社(NTT)は、固体量子系からのマイクロ波の超放射を実証した。この実証では、筑波大学で作製された窒素と空孔からなる格子欠陥をもつダイヤモンドの結晶とマイクロ波の共振器が用いられた。
 「超放射」という現象は以前より理論的に予言されていたが、実証するのは困難と考えられてきた。「超放射」とは、原子のひとつが光を放出するときに、他の原子も同時に光を放出することによって起こる現象。短い時間の間に強い光が放出されるため「超」放射と呼ばれている。これまでは特殊な対称性をもつ原子の集団が起こす超放射が考えられてきたが、TU Wienの研究チームは固体量子系を用いることでこれを実現することに成功した。ダイヤモンド結晶中にある窒素と空孔からなる格子欠陥は人工原子のように振る舞うので、超放射によってマイクロ波の光を強い閃光として放出すると期待できる。
 研究成果は、モデリングと理論解析を行ったNTT物性科学基礎研究所とNII、NVセンターを含むダイヤモンドのサンプルを作製した筑波大学、ダイヤモンドとマイクロ波共振器からなるハイブリッド量子系 を作製し超放射の測定を行ったTU Wienの共同研究により得られたもので、Nature Physics誌に発表された。
 超放射は、一つの光子の放出に多くの光子が誘導的に放射される点で、レーザと同様の原理をもつが、この2つの現象は本質的に異なる部分ももっている。レーザでは原子を励起するのに常に多くの光子を必要とするのに対して、超放射は一つの光子が閃光を起こす。超放射の実証は、マイクロ波のメーザなど固体を用いた多様な量子技術の発展の基礎として重要な成果。
(詳細は、https://www.nii.ac.jp)