October, 19, 2018, 東京--芝浦工業大学応用化学科の大石知司教授は、大気中で銅錯体膜へのレーザ照射により、有機樹脂上への銅配線が簡便に形成でき、配線形成の低コスト化に貢献できる技術を開発した。
今回の技術は、大気中で銅の処理を可能とし、数ミクロン幅の微小な配線形成が有機樹脂上に形成できるものである。従来はレーザ照射に耐えられるガラスなどの素材にしか形成できなかったが、これにより柔らかく耐熱性が低い有機樹脂への銅配線が可能となる。
近年、印刷技術を利用して集積回路やデバイスを作る技術(プリンタブルエレクトロニクス)が注目されているが、未だその配線行程には、酸素が無い環境での大がかりな処理設備や複雑な作製プロセスを必要とし、結果的にコストや時間がかかる問題がある。開発技術では、特別な環境下や機器を用いることなく有機樹脂上に銅配線形成を可能にするもので、ディスプレイやスマートフォンなどを容易かつ低コストに生産する技術として期待される。
分解性をもつ銅錯体溶液を有機樹脂(ポリイミドフィルム)上に塗布し、レーザ照射することで銅錯体に化学反応を促し、連続的に照射することで銅を定着させることに成功。原料となる銅錯体の種類を複数組み合わせ、その比率を工夫することにより、低エネルギー量(低出力)で銅を析出する条件を発見した。そのため、高エネルギー量で照射すると溶けてしまう有機樹脂上でも銅配線を形成することが可能となる。
また、この手法により、銅膜が均一化・緻密化し配線の表面がより滑らかになることで、導電性の高い銅配線が形成できる。従来必要であった特殊な設備が不要となるほか、銅めっき法との併用により、銅膜の厚さを増すことも可能。その際、通常の銅めっき法で使用される貴金属触媒(パラジウムなど)なども不要となるなど、大幅なプロセスの簡略化と低コスト化を実現した技術と言える。
(詳細は、https://www.shibaura-it.ac.jp)