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電子ビームの時間幅「1,000兆分の1秒」の評価法を開発

September, 7, 2018, 和光--理化学研究所(理研)放射光科学研究センターの井上伊知郎基礎科学特別研究員と矢橋牧名グループディレクターらの共同研究グループは、「X線強度干渉法」の原理に基づき、光速近くまで加速された電子ビームの時間幅の計測法を開発した。この計測法を利用することで、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」において、10フェムト秒(fs)を超える超時間高分解能で電子ビームの時間幅を計測することに成功した。
 今回の計測技術と電子加速技術によって現在よりも電子ビームを短くすることで、より時間幅の短いアト秒(100京分の1秒)領域のパルス幅のXFELの実現につながると期待できます。
 XFELはX線領域において初めて実現されたレーザ。ユニークな特徴の1つは、時間幅がフェムト秒と非常に短いこと。この短い時間幅を生かし、化学反応過程の解明や放射線損傷なしのX線構造解析などの研究が行われている。XFELを発振させる電子ビームの時間幅を制御できるようになると、XFELの発光時間の幅(パルス幅)を実験の目的に応じて柔軟に変えることができるが、現在の電子ビーム診断技術では電子ビームの時間幅を10fs以下の精度で測定することは困難だった。今回、共同研究グループは、電子ビームから放射されたX線を分光光学素子によって単色度を変化させながら強度干渉現象の程度を計測することで、電子ビームの時間プロファイルを計測できることを理論的に示した。また、実際にこの計測法をSACLAに応用した結果、その電子ビームの時間プロファイルが半値全幅7.3fsおよび45.8fsの二つのガウス関数(正規分布)の和として表されることが明らかになった。
 研究成果は、米国の科学雑誌『Physical Review Accelerators and Beams』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(8月30日付け)に掲載された。
(詳細は、www.riken.jp)