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KIT、世界最小のトランジスタを開発

August, 28, 2018, Karlsruhe--カールスルーエ工科大学(KIT)、Thomas Schimmel教授のチームは、世界最小、シングルアトム(単一原子)トランジスタを開発した。この量子エレクトロニクスコンポーネントは、単一原子の制御再配置により電流をスイッチする、現在はゲル電解質内の固体でもある。シングルアトムトランジスタは、室温動作、極低エネルギー消費であり、情報技術に全く新しい展望を開く。研究成果は、Advanced Materialsで発表される。
 デジタル化は、高エネルギー消費となる。産業化された諸国では、情報技術は現在、電力消費全体の10%以上を占める。トランジスタは、コンピュータ、PCs、スマートフォンにおけるデジタルデータ処理の主要な要素である。あるいは、洗濯機から航空機までの多くのアプリケーションの内蔵システムでも同様である。市販のローコストUSBメモリスティックは、すでに数十億のトランジスタを含んでいる。将来、KITの応用物理学研究所(APH)、Thomas Schimmel教授のチームが開発したシングルアトムトランジスタが、情報技術におけるエネルギー効率を大幅に改善することになる可能性がある。「この量子エレクトロニクス素子により、従来のシリコン技術と比較してスイッチングエネルギーは10000倍小さくできる」とSchimmelは言う。
 Advanced Materialsでは、KITの研究者が、微小化の限界に達したそのトランジスタを紹介する。研究チームは、2つの微小金属コンタクトを作製した。それらの間に、シングル金属原子幅のギャップがある。「電気制御パルスにより、われわれは1個のシルバー原子をこのギャップ内に置き、回路を閉じる。シルバー原子が再び取り除かれると、回路は遮断される」とSchimmel教授は説明する。「世界最小のトランジスタは、シングルアトムの制御された可逆動作により電流をスイッチする。従来の量子エレクトロニクスコンポーネントと対照的に、シングルアトムトランジスタは、絶対零度、-273°C付近で動作するたけでなく、すでに室温でも動作する。これは、将来のアプリケーションにとっては、大きな利点である。
 シングルアトムトランジスタは、全く新しい技術的アプローチに基づいている。そのトランジスタは、金属だけで構成されており、半導体は全く使われていない。これにより、極低電圧となり、したがって超低エネルギー消費となる。これまでのところ、KITのシングルアトムトランジスタは、液体電解質を利用してきた。今回、Schimmelのチームは、固体電解質で動作するトランジスタを設計した。熱分解二酸化ケイ素で水性銀電解質をゲル化することで作製したゲル電解質は、固体と、液体の電気化学特性という利点を統合している。こうして、シングルアトムトランジスタの安全性と扱いやすさが改善された。
(詳細は、http://www.kit.edu)