August, 22, 2018, Lausanne--EPFL (スイス連邦工科大学ローザンヌ校)の研究チームは、光ファイバで伝送されている間に不鮮明になった画像を再構成するための一種のマシンラーニングアルゴリズムを学ばせた。
この研究は、医療診断では内視鏡イメージングを改善し、光ファイバ通信ネットワークで伝送される情報量を増やし、ファイバで送られる光パワーを増やすことができる。
「われわれは、最新のディープニューラルネットワークアーキテクチャを利用して、光のスクランブル出力から入力画像を回復する。これは、1kmまでのファイバで可能であることを実証した」とEPFLのオプティクス研究所長、Demetri Psaltisはコメントしている。
光ファイバは、長年、光による情報伝達に使用されてきた。マルチモードファイバ(MMF)は、SMFよりも情報伝達量が遙かに大きい。空間形状が異なるために空間モードとして知られる多くのチャネルが多様な情報ストリームを同時伝送できる。
これらのファイバは光ベースの信号伝送には適しているが、これまでは画像の長距離伝送への適用には成功していない。これは、画像が全チャネルで伝送されるので、他端に出現するものが人の眼ではデコードできないスペクルパタンとなるからである。
この問題に対処するために、Dr. Psaltisのチームは、ディープニューラルネットワーク、一種のマシンラーニングアルゴリズムを利用した。ディープニューラルネットワークは、コンピュータに写真の物体を特定する能力を与えることができる。また,例えば、Googleの音声認識システムの改善に役立った。これらのアルゴリズムの設計は、人の脳でニューロンが情報を伝達する方法からヒントを得ている。インプットは,いくつかの人工ニューロン「隠れ層」で処理される。その各々が少計算を行い、結果を次の層のニューロンに送る。
われわれの脳は、多くの多様な例に直面することで対象物のメンタルモデルを展開する、例えば新しいタイプの木に直面したときに、われわれはそれを電柱ではなく木として認識できるようになる。同様に、ディープニューラルネットワークが十分に大きなトレーニングデータを経験すると、マシーンは、関連する出力のパタンを認識することで入力を特定できるようになる。
この研究に参加している研究者、Navid Borhaniによると、このマシンラーニング法は、画像を再構築する他のアプローチよりも遙かにシンプルである。他のアプローチでは、画像が光ファイバで伝送されると、出力のホログラフィック計測をする必要がある。ディープニューラルネットワークは、信号がファイバを伝送される際の環境外乱によって生ずる歪に対処することができた。ファイバ長に沿った温度のランダム変動は空気の流れによって生ずる動きとともに、画像にノイズを付加する、つまり信号の伝送距離が長ければ長いほどノイズは悪化する。
「MMFで伝送された情報を回復するディープニューラルネットワークの目覚ましい能力は、内視鏡などの医療処置や通信アプリケーションに利益をもたらすと期待されている。通信信号は、何kmもの伝送が必要なことがあり、歪の影響を受けるが、この方法はそれを補償することができる。医者は、極細ファイバプローブを使って体内の器官や動脈の画像を収集するが、複雑なホログラフィックレコーダは不要になり、身体の動きを心配する必要がなくなる。
「呼吸や循環によるわずかな動きが、MMFで伝送される画像をゆがめる。ディープニューラルネットワークは、こうしたノイズに対処する有望なソリューションである」とDr. Psaltisはコメントしている。
研究チームは、その技術を生体組織サンプルで試すことを計画している。異なるカテゴリの画像を使って一連の研究を行い、その技術の全ての可能性と限界を考察する予定である。