August, 1, 2018, Washington--ブリストル大学(University of Bristol)の研究チームは、1平方ミリメートルのチップベースデバイスを使って量子ベース乱数を1秒にギガビット(Gb/s)の速度で発生させることが可能であることを示した。その微小デバイスは、電力消費が極めて少なく、単独の乱数発生器を可能にし、ラップトップやスマートフォンに搭載してリアルタイム暗号化を提供する。
「制御エレクトロニクス部分はまだ集積されていないが、われわれが設計したデバイスは,全ての必要な光コンポーネントをワンチップに集積する。このデバイスをそれだけで、あるいは他のポータブル機器に搭載して使用すると、将来、情報の安全性、プライバシー保護の向上に非常に有用である」とUK、ブリストル大学、論文の筆頭著者、Francesco Raffaelli氏は説明している。
乱数発生器は、オンラインで買い物をしたり、安全なe-mailを送ったりなど、デジタル取引中に伝送されるデータの暗号化に使用される。今日の乱数発生器は、コンピュータアルゴリズムをベースにしており、使用されているアルゴリズムをハッカーが解明すると、データは脆弱になる。
Optics Expressに発表された論文で研究者は、ダイオードレーザからランダムに放出されるフォトンをベースにした乱数発生器を報告している。フォトンの放出は、本質的にランダムであるので、生成される数字を予測することは不可能である。
「最近実証された他の集積量子乱数発生器と比較して、われわれのものは、相対的に低い光パワーで、非常に高い発生率を達成できる。乱数生成で使用するパワーが少ないことは、チップの加熱などの問題回避に役立つ」とRaffaelli氏は説明している。
シリコンフォトニクス
新しいチップはシリコンフォトニクス技術の進歩によって可能になった。シリコンフォトニクスは,コンピュータチップを造るのと同じ半導体製造技術を使用して、シリコンで光コンポーネントを製造する。今では、シリコンに導波路を作製することも可能になっており、導波路は光エネルギーを途中で失うことなく、チップで光を導波できる。これら導波路はエレクトロニクスとともにチップに集積し、光信号を情報に高速変換するディテクタを集積することもできる。
新しいチップベース乱数発生器は、一定の条件で、レーザがフォトンをランダムに放出することを利用している。デバイスは、干渉計という微小デバイスを利用して、これらフォトンを光パワーに変換する。同じチップに集積された非常に小さなフォトディテクタが、次に光パワーを検出し、それを電圧に変換する。電圧は、乱数に変わる。
新しいチップベースのデバイスは、可搬性という利点を持つだけでなく、バルクオプティクスを使って作製された同じデバイスよりも安定性が高い。これは、干渉計が温度なとの環境条件に非常に高感度であるためで、また、小さなチップの温度制御の方が容易だからである。また,半導体製造を使って数千の同じチップを正確に複製することは容易である。一方、バルクオプティクスでは必要な精度の複製は難しい。
チップのテスト
設計を実験的にテストするために研究チームは、ファウンドリ製造の乱数発生チップを用意した。光学的、電子的パフォーマンスを評価した後、それを乱数発生に使用した。研究チームは、そのデバイスの潜在的なランダム生成率を約2.8Gb/sと推定している。これはリアルタイム暗号化に十分な速さである。
光コンポーネントを含むチップは、わずか1平方ミリメートルであるが、研究チームは乱数源に外部レーザ、エレクトロニクス、光テーブルを必要とする計測ツールを使用した。研究チームは現在、チップと必要なエレクトロニクスの両方を含む携帯電話サイズのデバイス作製に取り組んでいる。