August, 1, 2018, 仙台--東北大学などの研究グループは、グラフェンと同じ蜂の巣格子を持つ2ホウ化アルミニウム (AlB2)という物質が、線ノード型のディラック粒子という新しいタイプの電子状態をもつ物質であることを、放射光を用いた角度分解光電子分光実験により発見した。
このアルミニウム(Al)をマグネシウム(Mg)で置き換えた2ホウ化マグネシウム(MgB2)は39 Kで超伝導を示す高温超伝導体であり、この新たに発見されたディラック粒子を超伝導化することによって、今まで極低温でしか実現されていないトポロジカル超伝導体の転移温度を一気に高温化できる可能性がある。この発見は、ノイズに強いトポロジカル量子コンピュータの開発へ新たな道を拓くものである。
研究成果は、Physical Review B の速報注目論文 (Rapid Communication & Editors’ suggestion)に選ばれ、オンライン公開された。
研究グループ
東北大学大学院理学研究科の高根大地博士課程院生、木村憲彰准教授、佐藤宇史教授、同材料科学高等研究所の相馬清吾准教授、高橋隆教授、同多元物質科学研究所の組頭広志教授、および高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所の堀場弘司准教授など。
(注)
トポロジカル量子コンピュータ
異なる2つ以上の状態を量子力学的に重ね合わせて一度に信号処理する「量子コンピュータ」は、従来のコンピュータでは天文学的な時間のかかる因数分解の問題などを、数時間で解くような超高速計算が可能になると考えられている。しかし、その計算の途中で、量子力学的な重ね合わせ状態が壊れないように保つことが大変難しく、これを克服するアイデアとして、不純物に頑強なマヨラナ粒子を演算素子に利用することが提案されている。そのような環境ノイズに強い量子コンピュータは、トポロジカル量子コンピュータと呼ばれ、トポロジカル超伝導体の最も重要な応用と考えられている。
(詳細は、www.tohoku.ac.jp)