July, 25, 2018, 大阪--大阪大学レーザー科学研究所の加藤弘樹博士課程学生、重森啓介教授、長友英夫准教授らの研究グループは、レーザで核融合燃料が圧縮される際に問題となる表面の凸凹形成(レーザインプリント)が、硬くて重たい物質では抑制されることを初めて明らかにした。
これにより、凸凹が形成されにくいダイヤモンドのカプセルを用いた核融合燃料の安定した圧縮と効率的な加熱が期待される。また,実際にこれを核融合燃料に応用するためのキーテクノロジーとなる、高精度なダイヤモンドカプセルの作製にも成功した。
燃料カプセルがレーザ光で直接照射される核融合の方式(直接照射型慣性核融合)では、主に、“インプリント”と呼ばれる照射による凸凹形状の発生と、製作時のカプセル表面の粗さが、燃料の圧縮・加熱を妨げるため問題となっていた。
今回、同研究グループは、まず、このインプリントの低減機構の解明を行い、約100万気圧という超高圧状態においても弾性体として振る舞うダイヤモンドの硬さに着目し、インプリント擾乱における物質の硬さや密度の影響について基礎実験及びシミュレーションを実施した。その結果、ダイヤモンドに生じるインプリント擾乱は従来の典型的なカプセル材料であるポリスチレンの約30%にまで低減されることを実証した。
研究成果は「Physics of Plasmas」誌に掲載された。
さらに、大阪大学レーザー科学研究所と産業技術総合研究所との共同研究グループは、水素とメタンから成る原料ガスをフィラメント加熱によって分解し結晶成長させる方法で真球度~99。7%、数十ナノメートル以下の平滑性をもつ均一性の高いダイヤモンドカプセルの作製に成功した。研磨加工を必要としないこの手法は核融合用カプセルの大量生産に応用可能である。この成果は「Diamond & Related Materials」誌に掲載された。
(詳細は、www.osaka-u.ac.jp)