July, 13, 2018, Washington--ナノパターン・シルバーベースの新タイプ透明導電性電極膜の大規模製造が実証された。スマートフォンタッチスクリーンやフラットパネルTVsは、透明電極を使い、タッチを検知して素早く各ピクセルの色を変える。現在これらの電極に使われている材料に比べて、シルバー(銀)は脆弱性が少なく、化学的耐性が高いので、新しい膜はフレキシブルスクリーンや電極用途で高性能、長寿命オプションとなる。シルバーベースの膜は、窓、屋根、個人のデバイスにさえ導入できるフレキシブル太陽電池を可能にする。
Optical Materials Expressで、研究チームは、直径10㎝のガラスディスク上の透明導電性薄膜の製法を報告した。実験計測にほぼ一致する理論推定に基づき、研究チームは、その薄膜電極が、既存のフレキシブルディスプレイやタッチスクリーンで使用されているものよりも遙かに優れていることを計算で示した。
サザンデンマーク大学(University of Southern Denmark)、論文の筆頭著者Jes Linnetは、「われわれが製造に用いたこのアプローチは非常に再現性が高く、透明性と導電性の間の調整可能トレードオフにより化学的安定な構成を実現する。もしデバイスが透明性を高くして導電性を犠牲にするなら、膜厚を変えることによって膜を調整できる」と説明している。
ほとんどの今日の透明電極は、インジュウムスス酸化物(ITO)でできており、透明性は最大92%、ガラスに匹敵する。透明性は高いが、ITO薄膜は再現性のあるパフォーマンスを達成するには注意深い加工を必要としており、フレキシブル電極、ディスプレイに使用するには脆弱すぎる。研究者は、こうした欠点のために、ITOの代わりを探している。
金、銀、プラチナなどの防食性貴金属は、長寿命、化学的耐性があるITO代替に有望であり、フレキシブル基板に使える。しかし、これまでのところ、貴金属透明導電性膜は、表面粗さが大きく、性能劣化を起こす。膜と他の層との界面がフラットにならないからである。透明導電性膜はカーボンナノチューブを使っても造れるが、このような膜は現状、すべてのアプリケーションに適した高い導電性を示しておらず、また互いに重なり合ってスタックするナノチューブのために、表面粗さが問題になる。
新しい研究では、研究チームはコロイドリソグラフィというアプローチを使用して、透明導電性シルバー薄膜を作製した。まずマスキング層、つまりテンプレートを作製する。これは、10㎝のウエハを均等サイズ、密集したプラスチックナノ粒子の単層でコーティングした。このコーティングしたウエハをプラズマオブンに入れてすべての粒子サイズを均等に縮小する。シルバーの薄膜をマスキング層に堆積するとシルバーが粒子間の空間に入る。するとシルバーが粒子を溶解させ、ハニカムホールの精密パターンが残り、それが光を透過し、導電性、光学的に透明な膜ができる。
透明性と導電性のバランス
研究チームは、シルバー透明電極の作製に大規模製法が使えることを実証した。電気シート抵抗10Ω/平方以下を維持しながら80%の透過率である。これは、同等の透過率を持つカーボンナノチューブ膜で報告されているものの約1/10である。電気抵抗が低ければ低いほど、電荷伝導で電極は優れている。
「われわれの研究の最も斬新な側面は、計測結果と相関性の高い理論分析を使ってこの薄膜の透過特性と導電性特性の両方を説明したことだ。製造の問題は一般に、新しい材料から最高の理論的パフォーマンスを引き出すことを難しくする。この情報が将来、パフォーマンスに影響を与える問題を回避、あるいは最小化するようにわれわれが実験的に直面した問題を報告し、改善法を仮定した」とLinnetはコメントしている。
研究チームによると、コロイドリソグラフィは、化学的に安定で、様々なアプリケーションに有用な透明導電性薄膜製造に利用可能である。