July, 10, 2018, Los Angels--自律走行車の最大の課題の1つは、たとえ霧の中でも、確実に物体を検出、検知できるようにすることである。現在の可視光ベースのカメラと比べると、赤外線カメラは、霧、煙、可視光を散乱させる微粒子を通してでも高い視認性を提供できる。
空気の中では、赤外光、中でも中赤外範囲の光は、ほかの可視光、赤外波長と比べて散乱が著しく少ない。赤外線カメラは、可視光がまったくない暗闇の中でも効果的に見ることができる。しかし、現在、赤外カメラの配備は高コストと、有効材料不足のために制限されている。これは、赤外に固有の光学特性を持ち、スケーラブルな材料が、自律走行車を含む技術で物体認知で効果を現す可能性があるようなところである。
USC Viterbi工学部、ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)の研究者が空軍研究所(AFRL)、ミズーリ大学(University of Missouri)とともに開発した新しい材料は、そのような赤外検出アプリケーション、自律走行車、救急サービス、製造でも有望であると考えられる。
USC Viterbi工学部材料科学准教授、Jayakanth Ravichandranの研究グループは、カルコゲナイド・ペロブスカイトという新しい材料を研究している。これらの物質の中に、硫化バリウム・チタン(BTS)がある。これは、博士課程候補、Shanyuan Niuが大きな結晶形に再発見したことで、準備された材料である。研究グループは、ウィスコンシン-マジソン大学(University of Wisconsin-Madison)、ほかの研究グループと協力して赤外光とこの材料との相互作用の仕方を研究した。研究チームは、2つの異なる方向で、光との相互作用が違うことを発見した。
BTSが赤外像を改善する方法
BTS材料は、ある偏光を除去して画像コントラスト改善を達成するセンサ構築に利用できる。また、別の方向からの光をフィルタリングして遠隔対象物の特徴センシングに使える。これは、自律走行車で使われる赤外線画像の改善にとって特に重要である。自律走行車は、視界不良状況でも、車輌周囲の全景観を見る必要があるからだ。
「将来的には、自動車のBTS増強センサが、人体にとっての網膜と同じように機能してもらいたい」とShanyuan Niuは話している。
研究チームは、これら赤外応答材料が人の感覚を拡張できると考えている。自律走行車だけでなく、熱検知、温度計測アプリケーションなどが可能である。1つの応用として、消防士が使うイメージングツールの実現がある。燃焼ビルディングの外側に即席の温度マップを作成し、取り残された人々を救出するために、どこで火が広がり、どこで緊急対応が必要かを判断する。
現在、すべての消防署が赤外線装置を配置するにはコストが高すぎる。BTSは、地殻に豊富に存在する元素でできているので、赤外線装置をより安価に、効果的にすることができる。さらに、そのような材料は、ユーザーや環境にとって安全である。また、現在使用されている、水銀やカドミウムなどの危険な元素を含んでいる材料よりも廃棄が容易である。
これらの材料は、有害分子、ガス、生体系を検知するデバイスにも有用である。アプリケーションは、熱検知、汚染モニタリングから、医療までと幅広い。