July, 10, 2018, 名古屋--名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)の山口茂弘教授、多喜正泰特任准教授、ガージボウスキー・マレク(Grzybowski Marek)研究員らの研究チームは、理化学研究所 生命機能科学研究センター(BDR)の岡田康志チームリーダーおよび愛媛大学 大学院医学研究科の今村健志教授、川上良介准教授らと共同で、蛍光イメージング技術において近赤外領域(可視光線の赤色よりも長い波長領域)で長時間にわたって、安定して光り続けることができる蛍光標識剤の開発に成功した。
これまでの可視光を用いた生体試料の蛍光イメージングでは、光照射による細胞の機能障害や、試料の自家蛍光によるノイズの上昇に加え、体内の深い部位までは光が届かないため、血管や臓器などを観察することが困難だった。これらの問題は、可視光よりも波長の長い近赤外光を用いることで解決できるが、近赤外蛍光色素は、化学的な安定性や光安定性に乏しいため、次第に発光しなくなり、対象となる生体試料を長時間にわたって観察し続けることができない。
今回、共同研究チームは、代表的な蛍光色素の1つであるローダミン色素にリン原子を導入し、これを酸化することによって、極めて高い化学的安定性と光安定性を併せ持つ近赤外蛍光色素「PREX 710」の開発に成功した。PREX 710は、生体分子と結合できる部位を有しているため、近赤外蛍光標識剤として利用することができる。これにより、蛍光1分子の長時間追跡や脳内血管の深部観察が可能になることから、生命科学や基礎医学分野などへの幅広い応用が期待される。
研究成果は、ドイツ化学誌「Angewandte Chemie International Edition」に掲載された。
(詳細は、www.nagoya-u.ac.jp)