July, 10, 2018, Aberdeen--ヨーロッパ南天天文台(ESO)運営VLT望遠鏡を構成する4つの主望遠鏡に入る光を、初めて1つのスペクトログラフに統合することに成功した。星の光の分析は、Munich-Martinsriedのメンロシステム(Menlo Systems)が開発したAstroCombによって改善される。
チリのCerro Paranalに加えて、ESOのエンジニアと天文学者は夢を実現した。天文学者たちは、4つの主望遠鏡の各々によって集められた宇宙の彼方の物体からの光を統合し、それを新開発のESPRESSO分光計に送って分析することに成功した。すべての光を1つの計測装置に入れることによって天文学者は、以前には得られなかった情報を利用できる。言い換えると、今は、宇宙の仕組みをさらに深く覗き込むことができる。実際、VLTの8.2-mミラー4つすべてからの光を単一の画像に結合することで、集光面積では、VLTは世界最大の光学望遠鏡となる。
Menlo Systemsのこの技術的快挙への貢献は、AstroComb、分析できる光の精度を大幅に高める計測器である。AstroCombは、特に天文学での利用向けに設計された周波数コムである。John Hall教授とともに、量子研究マックスプランクディレクター、Menlo Systemsの創始者Theodor Hänsch教授は、周波数コムの発明で2005年ノーベル物理学賞を受賞した。
その名が示すように、周波数コムは、数万の等間隔レーザラインの一群である。このラインのいずれも、既知の周波数の光でできており、原子時計、GPSのように基本周波数基準に関して定義されている。その結果、周波数コムは、極めて高精度に単一周波数を計測するために使用できる。
ESOで新しい分光計のキャリブレーションに、周波数コムを生成し、収集した星の光と並行して、ESPRESS計測器に送り込まれる。星の光と周波数コムの両方とも次に、非常に大きな回折格子を通して、そのスペクトル成分に分けられ、CCDベースのカメラに投影される。これによってコムの個々の歯が明らかになり、次にそれを定規のように使って精確な周波数を星の光のスペクトルにおける吸収線に割り当てる。
Menlo Systemsが作製したAstroCombにより、物理学者は、前例のない精度、精確さで、宇宙の知られる限り最遠端の物体から届く光のスペクトルを計測することができる。星のスペクトルは、1つの星、あるいは銀河全体の化学成分、およびわれわれからの距離についての情報をエンコードする。それらを解釈するために宇宙物理学者は、取得する特徴(ライン)の周波数を可能な限り精確に、計測、分析しなければならない。地球外放射のラインと周波数コムのラインとを比較できることで、この作業から得られる情報は一段と多くなる。
宇宙物理学者は、地球に似た太陽系外の惑星の探査にESPRESSOスペクトルグラフを利用する計画である。AstroCombにより、物理学者は、星のスペクトル線の微小な変化を検出できるようになっている。この種の動的変化により、所定の星が実際に惑星のホストかどうかが明らかになる。また、太陽系外惑星の軌道周期、惑星の親星からの距離とそのサイズを判定するために使える。天文学者は、ESPRESSOを使ってクエーサ観察も行う。クエーサは、アクティブな銀河中心核で最も明るく、巨大なブラックホールからエネルギーを得ている。加えて、研究者は、自然の定数が実際に定数かどうかを研究しようとしている。これらの探求のすべてが、外部摂動に対して極度の構造安定性があり、高精度と高感度とを統合した観察技術を必要としている。MenloのAstroCombは、この目的達成に大きく貢献している。
(詳細は、www.menlosystems.com)