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光と物質を相互作用させる新しい方法を考案

June, 22, 2018, Alhambra--MITとイスラエルのTechnionの研究者が開発した光と物質の相互作用を強める新しい方法は、いずれ、幅広い波長範囲から光を取り込む、より効率的な太陽電池、完全チューナブルな新しい種類のレーザやLEDになる。 
 この新たなアプローチの背景にある基本原理は、通常は何ケタも速い、光粒子、つまりフォトンの動きを、電子の動きにより一致させる方法である。運動に大きな差があるので、これらの粒子は通常、相互作用は極めて弱い。それらの運動をもっと近づけると、それらの相互作用のコントロールを遙かに大きくすることができ、このプロセスについての新しい種類の基礎研究が可能になり、多くの新しいアプリケーションも可能になる、と研究チームは話している。
 研究成果は、Nature Photonicsに発表されている。
 シリコンは、ほとんどの今日のエレクトロニクスの基盤として極めて重要な物質であるが、LEDや太陽電池のような光を必要とするアプリケーションに最適ではない。とは言え、その効率が低いにもかかわらず、シリコンは、現在、太陽電池に使われている主材料である。光と、シリコンのような重要なエレクトロニクス材料との相互作用を改善することは、フォトニクスと電子半導体チップとの集積に向けての重要な到達点である。
 Technionの物理学教授、Ido Kaminerによると、この問題を研究しているほとんどの人々はシリコンそのものに注力している。しかし、「このアプローチは大間違いだ。われわれは、シリコンを変えるのではなく、光を変えようとしている。光と物質の相互作用で、材料をデザインしようとしているが、光側のデザインについては考えていない」と同氏は言う。
 それをする1つの方法は、個々のフォトンの動きを飛躍的に遅くして電子の動きに近づけられるように光の動きをスローダウン、圧縮することである。理論研究では、光をグラフェン層で覆った一種の多層薄膜材料を透過させることで1000倍遅くすることができる。GaAsとInGaAs層でできた層材料は、それを透過するフォトンの挙動を非常に制御性よく変える。これにより、研究者は材料から放出される周波数を20~30%制御できるようになる、と論文の筆頭著者、Kurmanは説明している。
 フォトンと、電子とホールのような逆帯電した粒子との相互作用は、プラズモンと言う擬粒子、つまりプラズモン-ポラリトンを生成する。これは、この研究で使用される2D層デバイスのような新種の材料で起こる一種の振動である。そのような材料は、「その表面上の電磁振動をサポートし」、材料内に「非常に強く閉じ込められている」とMIT院生、Nicholas Riveraは言う。このプロセスは、光の波長を効果的に数ケタ収縮し、それを「ほぼ原子スケール」に下げる。
 その収縮により、光を半導体に吸収でき、それから発光される。グラフェンベースの材料では、こうした特性は、グラフェン層に直接印可される電圧を変えるだけで実際に制御可能である。そのようにして、「われわれは、光の特性を完全に制御することができる、単に計測するだけではない」(Kurman)。
 研究は、まだ初期の理論段階であるが、このアプローチは、幅広い光波長を吸収する新しい種類の太陽電池に行き着く。また、レーザやLEDのような発光デバイスも可能になる。
(詳細は、www.mit.edu)