May, 18, 2018, Washington--新しい研究で、音波を使って水滴を空中に浮遊させることで有害な重金属汚染物質、水中の鉛や水銀などの検出が改善できることが示された。水中の微量の重金属の検出は、重要である。これらの汚染物質は人の健康や環境に有害だからである。新技術は、最終的に、リアルタイム、現場で汚染をモニタリングする計測器になる。
「連続モニタリングする多様な水センサはあるが、水に溶け込んだ多くの重金属の検出は、特殊なラボ分析のためにサンプルを送ることで実行される」とInstituto de Ciencias Físicas UNAMの研究チームリーダー、Victor Contrerasは指摘する。「われわれの新技術は、現場でリアルタイムに適用できるより簡素な分析アプローチの開発に向けて一歩前進である。この種の水分析は、農業、薬業、浄水および他の産業で水の汚染物質モニタに使用できる」。
Optics Lettersに発表された研究によると、新しいアプローチはLIBS(レーザ誘起ブレイクダウン分光法)を使って、浮遊した水滴に存在する重金属を分析する。水滴を浮遊させることにより、コントロールされた位置に水が蒸発し、サンプルの汚染物資の質量濃度が増加して、LIBS分析の実行が容易になる。研究チームは、バリウム、カドミウム、水銀などの低レベル重金属を信頼性良く、わずか数分で検出できることを示した。
液体にLIBSを使用
研究チームは、LIBSを使用した。いくつかの元素を同時に特定する迅速かつ直接的な方法だからである。LIBSは、高エネルギーレーザパルスをサンプルに照射することで機能する。レーザ照射により材料が気化し、プラズマが生成される。プラズマから放出される光が材料の原子フィンガープリントを含んでいるので、放出光を分析することでサンプルの化学組成が特定できる。
固体サンプルにLIBS分析を使用することはわかりやすいプロセスである。実際、商用ハンドヘルド機器の中にはこの種の分析が利用できるものがある。しかし、この方法を使って液体を直接分析することは難しい。液体に形成されるプラズマは冷却が早く、極めて短時間しか存続しないからである。さらに、液体表面のプラズマ生成は、水はねをともない、それが分光計読み取りに直接影響を及ぼす。
液体サンプルで、化学検出の良好なシグナルを作るプラズマを生成するには、高レベルレーザエネルギーを必要とする。それは大きな、持ち運びできないレーザが提供できるだけである。この問題を回避するには、液体サンプルは一般に基板上に液滴を落とし、それが乾燥してサンプルの関心ある元素が濃縮されるするのを待つ。サンプルを基板に落とすのは極めて簡単ではあるが、レーザパルスは基板とサンプルの元素から原子を励起する。また、水分蒸発は基板上の不純物の不均一分布につながり、その信号再現性を危うくする。
液滴を基板に落とす代わりに、研究チームは強い音波を使って、一滴の水を浮遊させた。音波は、重力に逆らうだけの力を生み出すので、液滴は、空中に支持なしで浮遊する。
「音響浮揚は、関心のある元素を予備濃縮するための簡単で安価な方法である。同時に、基板表面からの汚染を回避できる。さらにそれは、浮揚のために他の方法のように電気や磁気応答を全く必要としない」とContrerasは説明している。
液滴の分析
論文では、研究チームは、水滴を浮揚させるために音響を使うことによって、非常に低濃度の重金属を検出できることを示した。たとえば、リットルあたり0.7ミリグラムのカドミウム、リットルあたり0.2ミリグラムのバリウムを検出した。また、研究チームが使用した音響浮揚技術はLIBS分析の再現性に十分な安定度があることも示した。