May, 11, 2018, Gaithersburg--米国国立標準技術研究所(NIST)の研究チームは、レーザパワーを計測する斬新な方法を開発してきた。Radiation Pressure Power Meter (RPPM)、放射圧パワーメータという装置は、レーザ光そのものによる力を利用することで計測する。
NISTのチームは、現在、ニューメキシコの米軍が運営している高エネルギーレーザシステムテスト施設(HELSTF)のレーザを用いて、これまでの最高出力、50kWでこの装置を完全にテストした。比較のために、5kWレーザビームで、1インチ鋼を切断できる。
NIST研究チームは、すでに独自のパワーメータを利用して、10kWでRPPMをテストしている。しかしHELSTFにははるかに強力なレーザがあり、米国DODのために指向性エネルギー技術の研究、開発、試験、評価に利用されている。NISTは、米軍と海軍の強い要請によりテストを行った。特に、カリフォルニア州特殊作戦海軍、Naval Surface Warfare Center、Corona Division (NSWC Corona)が、この技術の重要な出資支援者となった。
NSWC Coronaの計測科学・工学局の主席研究者、Subrata Sanyalは、「RPPMは、間違いなく革新技術であるが、まだ能力全開に達したことがない。この独創的なレーザパワー校正原器で、産業用レーザから軍用レーザを力づけ、またさらなるハイパワーでRPPMを評価するためにNISTとの協力を継続する」とコメントしている。
レーザパワーを計測する従来技術は、ビームからの全エネルギーを熱として吸収する機器の利用を必要としている。温度変化を計測することで研究者は、レーザパワーを計算する。
しかし非常に高いレーザパワーでは、この従来法は、実施に用心が必要になる。計測器が適切に冷却されていないと、計測すべきレーザビームによって破壊されるからである。
ヒートシンクとして機能する代わりにNISTのRPPMは、レーザ光の圧力をミラーで計測することで機能する。
光に質量はないが、運動量がある。このため、光が物体から反射されるとき、光からわずかな力、つまり放射圧が生ずる。例えば、大きな100kWのレーザビームは、小さいが認識できる力を持つ。68ミリグラム相当の重さ、約2個のステイプラ(ホッチキス)程度である。
そのような微小な力を計測するためにNISTのRPPMは、入射光の99.999%を反射することができる鏡面を持つ高精度ラボ用計測器を使用する。マルチキロワットレーザビームがミラーで反射されると、そこから得られる圧力が計測器によって記録される。力の計測は次に、パワー計測に変換される。
HELSTFレーザは、以前、最先端のヒートシンク型レーザパワーメータで計測されたことがあるが、これには制約がある。各パワーテストは完了までに数分かかる。さらに、計測者は、そのレーザで研究しているヒートシンクデバイスを同時に使うことができない。計測デバイスがレーザビームを吸収するからである。また、それらは大きく重く、大電力と冷却を必要とする。
それに対して、RPPMは小型(靴箱程度)、パワーも冷却要件も小さく、リアルタイム計測ができる。レーザビームは、完全なままミラーで反射されるので、光はそのままアプリケーションに利用できる。また、ヒートシンクデバイスと違い、RPPMはそれ自体が原器である、つまりその精度を確定するために他のパワーメータと比較する必要がない。
研究チームは、赤外線カメラと他の温度センサを設定し、RPPMが完全に機能することを確認した。
さらに研究チームは、HELSTFレーザのパワー1kWから50kWまで、2週間にわたり約300回の計測を行った。RPPMは、その全範囲で1.3%から4.5%の精度で計測できることを確認した。