May, 2, 2018, 京都--内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の八木隆行プログラム・マネージャーの研究開発プログラムの一環として、京都大学の戸井雅和教授グループの1つ、齊藤晋 講師、津下到特定病院助教らの形成外科チームは、光超音波トモグラフィによる皮膚の精細な3D血管地図の作成に成功した。
がんの切除後に組織の欠損が生じた場合、体の別の部位から血管を付けた状態で皮膚や皮下脂肪を採取し、欠損部の近くにある血管と吻合させることによって組織を移植する手術が行われる。これを遊離皮弁移植術という。太ももの皮膚はしなやかで、また採取による後遺症もほとんど無いため、近年ではよく移植ドナーとして用いられている。顔や手などの形を精巧に再現しようとすればより薄い皮弁が必要となるが、薄くすればするほど血管が損傷されるリスクが高くなるため、経験の豊富な医師でも危険性の高い手術だった。
研究では「光超音波トモグラフィ技術」を用いて太ももの撮影を行い、超音波やMRIでは描出できない細かい血管のネットワークを描き出すことができた。さらに、深さごとに色分けを行うことによって、3D情報を含んだ血管地図を作ることに成功した。光超音波トモグラフィは、血管に光エネルギーを与えることにより発生した超音波を探知して、血管を映像化する新しい撮影技術で、撮影に造影剤を用いないために極めて安全に検査をすることができる。研究は、光超音波トモグラフィが移植治療における術前評価法として有用であることを示し、より優れたがん治療法の創出にもつながる画期的な成果である。
研究成果は、米形成外科学会の学術誌Plastic and Reconstructive surgeryに掲載された。
(詳細は、www.jst.go.jp)