京都産業大学､オルガネラ（細胞小器官）間相互作用の可視化に成功

April, 26, 2018, 京都--京都産業大学の遠藤斗志也教授、山形大学の田村康准教授らの研究グループは、スプリットGFPと呼ばれる分断された蛍光タンパク質を利用することで，複数の異種オルガネラ間の相互作用部位（コンタクトサイト）を、生きた細胞内で可視化することに世界で初めて成功した。研究成果は「Scientific Reports」誌にオンライン掲載された。

　人の体を構成する細胞の中には、オルガネラと呼ばれる脂質の膜で囲まれた細胞小器官が発達している。オルガネラはその内部に特定の酵素群を隔離、濃縮することで独自の機能を効率よく安定的に発揮するので、互いに混ざり合わないように、独立して存在するとこれまで考えられてきた。しかし､最近の研究により、オルガネラ同士が結合し、物質をやり取りしながら機能する可能性が指摘され始めた。
　京都産業大学のの研究グループは、スプリットGFP分子を、異なる2つのオルガネラ膜表面に集まるように工夫した人工タンパク質を設計した。この2つの人工タンパク質を強制的に作り出す細胞を作製し、蛍光顕微鏡下で観察し、複数のオルガネラ（ミトコンドリア・小胞体（核）、液胞、ペルオキシソーム、脂肪滴）のいずれの組み合わせにおいても粒状のGFP蛍光が検出された。このスプリットGFPに由来する蛍光が、異なる２つのオルガネラ上に観察されたこと、また既知のオルガネラ結合因子と同じ場所に観察されたことなどから、スプリットGFPによってオルガネラ間コンタクトサイトが可視化されたことが分かった。
　研究成果は「Scientific Reports」誌にオンライン掲載された。現在、オルガネラ間の結合因子は、ほとんど実体がわかっていない。この実験系の確立により、その因子の解明が進むと期待される。またオルガネラ間相互作用の生理的意義（役割）の解明や、オルガネラ間の相互作用異常が報告されている神経変性疾患の病態解明への応用が期待される。
(詳細は､www.kyoto-su.ac.jp)