Science/Research 詳細

SACLAにおける光渦照射による針状構造の形成-X線の波面制御と元素選択性を利用した新しい微細加工法の確立

April, 20, 2018, 和光--理化学研究所(理研)放射光科学研究センター放射光イメージング利用システム開発チームの香村芳樹チームリーダー、武井大客員研究員、ビームライン研究開発グループの矢橋牧名グループディレクターらの国際共同研究グループは、X線自由電子レーザ(XFEL)施設「SACLA」のX線を絞ると同時に波面を制御しながら試料に照射すると、X線のビーム幅よりはるかに細い、回折限界以下の針状の微細構造を形成できることを示した。
 研究成果は、XFEL施設のX線を使い、その波面制御を行いつつ物質に照射することで、新しい微細加工法の確立に貢献することが期待できる。
 今回、国際共同研究グループは、SACLAのX線レーザの波面を制御し中心強度ゼロで、周囲にマイクロメートル(µm)スケールのドーナツリングを持つ「光渦(ひかりうず)ビームを形成した。このビームを薄膜試料表面に照射し、試料表面で光解離(アブレーション)現象を起こした。その結果、クロムと金の多層膜を試料とした場合、針状の微細構造が生じ、その典型的な高さと幅はそれぞれ0.6µmと0.3µmだった。また、元素分布ごとの3次元分布の時間変化を1ピコ秒(1兆分の1秒)程度の時間分解能で計算することで、アブレーションの過程や針状構造の形成過程を、異なった相を持つ2元素の元素分布及び相分布によって説明できることを示した。
 研究成果は、米国の科学雑誌『Applied Physics Letters』のオンライン版に掲載された。
(詳細は、www.riken.jp)