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東京大学生産技術研究所、回折限界を超えた光ナノ加工技術を開発

April, 19, 2018, 東京--東京大学生産技術研究所の立間徹教授と齋藤 滉一郎 大学院生(当時)は、右巻きと左巻きのナノ構造を、右巻き、左巻きの円偏光で簡単に作り分ける技術を開発した。それぞれ、強いキラリティを示す。
 酸化チタンの上に直方体の金ナノ粒子を載せ、円偏光を照射すると、プラズモン共鳴によって、光の偏りが生ずる。光がより強くなった部位で、鉛イオン(Pb2+)が酸化鉛(PbO2)に酸化され、析出する。酸化鉛はプラズモン共鳴を強調する特性があるため、プラズモン共鳴にもねじれの特性が与えられる。その結果、右円偏光に応答するナノ構造と、左円偏光に応答するナノ構造を作り分けることができる。
 光による加工は、「回折限界」と呼ばれる限界に阻まれ、通常は、用いる光の波長よりも細かい細工はできない。これに対してこの技術では、プラズモン共鳴によって波長の1/10以下の狭い領域に光を閉じ込めることで、回折限界を超えたナノ加工を実現した。
 右巻きや左巻きのナノ構造は、3次元ディスプレイに使う円偏光発光、アミノ酸など生体分子のL体とD体を区別するセンサ、L体とD体を作り分ける光触媒、光を自在に曲げるメタマテリアルなどへの応用が期待される。

発表のポイント
・右巻きと左巻きのナノ構造を、右巻きと左巻きの円偏光で簡単に作り分ける技術を開発した。
・リソグラフィ法などを使わないため、短時間で、安価に、大面積の構造を作れる。
・ナノ構造はプラズモン共鳴を示すため、3次元ディスプレイに使う円偏光発光、アミノ酸など生体分子のL体とD体を区別するセンサ、L体とD体を作り分ける光触媒、光を自在に曲げるメタマテリアルなどへの応用が期待される。
(詳細は、https://www.iis.u-tokyo.ac.jp)