April, 6, 2018, 東京--電磁波のエネルギー最小単位である光子の測定や検出は、次世代のコンピュータとして期待される量子コンピュータの制御に関わる基盤技術として注目されている。東京大学先端科学技術研究センターの中村泰信教授、東京大学大学院工学系研究科河野信吾博士課程学生、および東京医科歯科大学教養部越野和樹准教授らの研究グループは、理化学研究所創発物性科学研究センターとの共同研究により、マイクロ波単一光子の量子非破壊測定に世界で初めて成功した。
従来型の光子検出器は、飛来した光子を吸収してそのエネルギーを電気信号に変換し、検出する。この従来型検出方法では光子自体が検出と同時に消滅してしまうため、それを光子の検出以外に利用することはできない。そのため、光子の飛来の有無の情報のみを取得し、光子を吸収せずに反射する、「量子非破壊測定」と呼ばれる方法が提案されている。光子の量子非破壊測定は、近赤外光子において2013年に実証されたが、相対的にエネルギーが4~5ケタ小さなマイクロ波光子の測定はこれまで実現されていなかった。今回、研究グループは、飛来するマイクロ波単一光子の有無を超伝導回路上の量子ビット素子に蓄えられる量子情報に変換することにより、マイクロ波単一光子の量子非破壊測定を実現した。
今後、この研究で開発した技術は、超伝導量子ビット素子間で量子情報をやりとりする量子ネットワーク技術や量子センシング技術につながると期待される。
研究成果は、Nature Physicsオンライン版に掲載された。
(詳細、http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp)