April, 4, 2018, Washington--マックスプランク光科学(Max Planck Institute for the Science of Light)の研究チームは、粒子ベースのレーザを光ファイバ内でトラップし、初めて数cm進めた。新しいフライングマイクロレーザにより、ファイバ長に沿って高感度温度計測が可能になり、遠隔のアクセスできない場所に正確に光を伝搬する新しい方法を実現できる。
同研究所のRichard Zeltnerは、「フライングマイクロレーザは、体内に光を供給するために使える可能性がある」と言う。「ファイバを皮膚に挿入し、適切な波長で発光するマイクロレーザが、正確に位置を指定して光を供給し、光活性化薬剤に利用できる。このコンセプトは光流体lab-on-a-chipデバイスにも適用して、様々な生体分析技術の光源、高い空間分解能のオンチップ温度計測の光源を供給できる」。
Optics Lettersに発表された論文によると、フライングマイクロレーザは、ミリメートルオーダーの位置分解能を持つ温度センシングが可能である。実証では、フライングマイクロレーザは分布センシング、光ファイバに沿ってリアルタイム連続センシングとしてのアプローチに使えることが示された。
フライングマイクロレーザは、ホイスパリングキャラリーモード共振器、ある光波長を閉じ込め強化する小さな粒子をベースにしている。
「これは、ホイスパリングキャラリーモード共振器を使う分布センシングの初の実証である。センシングへのこの独自のアプローチにより、分布計測で多くの新しい可能性が開かれ、遠隔の物理的特性を高い空間分解能で評価することができるようになる。例えば、苛酷環境での温度センシングに使える」とZeltnerは説明している。
フライングマイクロレーザ実現のための重要コンポーネントは、中空コアPCFとして知られる特殊ファイバである。このファイバは、中心コアが固体ガラスではなく中空になっている。中空コアは、ファイバ内の光を閉じ込めるグラスマイクロ構造で囲まれている。
「われわれの研究グループは、かなり前から、中空コアPCFに粒子を光学的にトラップするために必要な技術を開発してきた。この新しい成果では、この技術を粒子閉じ込めに適用するだけでなく、ファイバで長距離に及ぶセンシングに使えるレーザとしてそれを機能させるようにもすることができた」と研究チームのメンバー、Shangran Xieはコメントしている。
フライングマイクロレーザを造るために研究チームは、水で満たされた中空コアファイバにレーザ光を入れ、マイクロ粒子を光学的にトラップした。従来のレーザを造るために使用する材料と同様に、マイクロ粒子は利得媒体を含んでいる。研究チームは、第2レーザビームでこの利得媒体を励起し、マイクロ粒子にレーザ発振させた。ファイバに沿って存在する粒子はトラップするレーザ、コア内に水を流すことで生成される光の力を使って制御される。
温度変化をセンシングする新システムの能力をテストするために、研究チームは、室温以上22℃まで加熱したファイバの2つの領域に沿って発振マイクロ粒子を進めた。マイクロ粒子からのレーザ発振波長の変化を計測することで、マイクロレーザがファイバを伝搬するにともなって変化する温度を正確に検出することができた。センサは、わずか3℃以下の温度変化を検出し、数ミリメートルの空間分解能を達成した。
「この分布センサの空間分解能は、究極的には粒子サイズに制約される。すなわち、われわれは非常に長い計測範囲で数µmの空間分解能を達成できると言うことである。これは、他の分布温度センサに対して、われわれのシステムの非常に大きな優位性である」とZeltnerは話している。
レーザドップラ速度測定という技術を使い、研究チームは、実験中に粒子が250µm/secの速度で移動することを確認した。研究チームによると、水よりも空気を満たしたファイバを使うことで、推進速度を数cm、あるいは数mに増速できる。
実験で使われたマイクロ粒子は、光退色により1分程度で発振能力を失う傾向があるが、異なる利得材料を用いるマイクロ粒子がこの問題を解決すると研究チームは見ている。