March, 5, 2018, Pasadena--NASAの新しいプロジェクトは、「オミクス」(omics)研究に使用される技術開発が目的である。オミクスは、人の健康にとって重要な微生物学分野であり、ゲノム、マイクロバイオーム、プロテオームの研究を含む。
宇宙オミクスプロジェクトは、NASAのJet Propulsion Laboratory(JPL)が主導しており、先頃期間4年でNASAのTranslational Research Institute for Space Healthの助成金を獲得している。その間に、NASAは、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載する、微小重力でこぼれることなく血液サンプルのような液体を取り扱える計測器用に3Dプリントできる設計の開発を考えている。このようなツールにより宇宙飛行士は、生物学的試料を分析することができ、地球に送り返す必要がなくなる。
宇宙飛行士の健康にバクテリアがどうのような影響を与えるかを知ることで、火星などへの長期ミッションの安全を保証することができる。
NASAは、宇宙ステーションで微生物の多様性を調べた、微生物追跡1(Microbial Tracking 1)実験で、すでにオミクス研究を実施した。しかし現在、ステーションでサンプルを処理する方法がないので、地球に送り返さなければならない。
宇宙プロジェクトのオミクス首席研究者、JPLのKasthuri Venkateswaranによると、サンプルを採って分析されるまでの時間は数カ月である。
サンプル準備に関わる最大の難題の一つは、微小重力における流体の取り扱いである。宇宙飛行士が様々なサンプルを収集する。飛行士の唾液や血液、ISS壁からふき取った微生物など。これらのサンプルは、次に水と混ぜて、分析のために計測機に注入できなければならない。適切なツールがなければ、サンプルはこぼれ、流れ、気泡が生じ、結果が危うくなる。
昨年NASAは、初めて宇宙でDNAを配列することで大きな一歩を踏み出した。宇宙飛行士は、Oxford Nanopore Technologiesが開発した、微小ハンドヘルド配列ツール、MinIONを使った。
宇宙におけるオミクスは、MinIONデバイス向けにサンプルを準備する自動DNA/RNA抽出器開発によるこの成功を基盤にしている。この抽出器の重要な部分は、3Dプリントできるプラスチックカートリッジである。これは、MinION配列用サンプルから核酸を抽出するために必要である。
以前のオミクス研究で、宇宙飛行士の免疫システムが、ISSで生活した後に弱くなる傾向が明らかになった。研究者は、現状ではその理由は分からないとしている。
人の年齢も含め、遺伝子がどのように表現されるかというエピジェネティクス分野が、微小重力や宇宙船がわれわれのDNAにどのように影響を与えるかの説明に役立つ可能性がある。
しかし、宇宙船におけるオミクスは、ISSで飛行する人間の乗員についてだけでない。人や積み荷が運び込み、宇宙船に累積する微生物も対象にしている。
(詳細は、www.nasa.gov)