February, 2, 2018, Basel--物理学研究チームが、ナノスケールで原子画像実現に使える光学顕微鏡ベースの技術を開発した。特に、新方法は半導体チップにおける量子ドットのイメージングを可能にする。
ルール大学ボーフムの研究者とともに、バーゼル大学の物理学部およびスイスナノサイエンス研究所の研究チームは、Nature Photonicsに研究成果を発表した。
われわれは、他の方法では人の目に見えない構造を顕微鏡で見ることができる。とは言え、従来の光学顕微鏡は個々の分子や原子のイメージングに使うことはできない。これらは、直径が1nmのほんのわずかの大きさに過ぎないからである。これは、光の波動性およびそれに関連する物理法則に関係しており、1873年にドイツの物理学者、Ernst Abbeが定式化した。
このような法則に従い、顕微鏡の最大解像度は、使用する光波長の半分に等しい。例えば、波長500nmの緑色光を使うと、光学顕微鏡は、せいぜい250nmの距離でしか対象を区別できない。
しかし、最近では、研究者はこの解像度の制約を回避し、直径がわずか数ナノメートル(nm)の構造の画像を生成できるようになった。そのために、様々な波長のレーザを使い、物質の一部で分子の蛍光を発光させる。同時に周辺では蛍光を抑制する。これにより、研究者は、サイズがわずか数nmの色素分子などの構造を撮像することができる。この方法(誘導放射抑制:STED)の開発は、2014年にノーベル化学賞を受賞している。
バーゼル大学物理学部およびスイスナノサイエンス研究所、Richard WarburtonのチームのTimo Kaldeweyは、ルール大学ボーフムの研究者と協働して、ナノスケール対象物、特に量子力学2準位系のイメージングができる同様の技術を開発した。
研究チームは、量子ドット、半導体の人工原子を研究した。新しい方法は、量子ドットを輝点として撮像することができた。研究チームは、その原子を、パルス毎に色が変わるパルスレーザで励起した。その結果、原子の蛍光がON/OFFに切り替わる。
STED法が、レーザ励起に応じて、少なくとも4つの異なるエネルギー準位を占めることによって動作するのに対して、バーゼルの新しい方法は、わずか2つのエネルギー状態の原子で機能する。この種の2状態システムは、量子力学の重要なモデルシステムを構成する。
STED顕微鏡と違い、新しい方法は、熱も発しない。「これは大きな優位性である、発熱は調べている分子を壊すからである」とRichard Warburtonは説明している。「われわれのナノスコープは、2エネルギー準位の全ての物質に適している、例えば実際の原子、コールド分子、量子ドット、あるいはカラーセンタなどに適している」と同氏は話している。