January, 18, 2018, 東京--理化学研究所(理研)放射光科学総合研究センター生命系放射光利用システム開発ユニットの小林周研修生(慶應義塾大学理工学研究科博士課程3年)、中迫雅由客員主管研究員(慶應義塾大学理工学部物理学科教授)、山本雅貴ユニットリーダーらの研究チームは、X線自由電子レーザ(XFEL)施設「SACLA」で得られる集光ミラーで強度増強されたXFELパルスの波面のそろい具合(空間コヒーレンス)を30Hzのパルスごとに正しく評価する理論および測定方法を考案し、確立した。
SACLAでは、波面がそろった大強度X線パルスを発生させることができる。X線を散乱する能力が乏しい試料の回折実験など、特に強いXFELパルスが必要な場合は、集光ミラーを用いてビームサイズを小さく絞り、さらに強度を高める。これまで、集光ミラーの位置を適切に調整すれば、XFELパルスの波面も試料位置でそろうと考えられてきたが、2014年、ドイツとSACLAの共同研究グループが、XFELパルスの空間コヒーレンスを表すパラメータを測定し、完全に波面がそろっているときを1.0とすると、SACLAでは0.7程度しかないと発表した。
今回、研究チームは、先行研究で提案された解析方法に大きな問題があることを発見した。正しく空間コヒーレンスを見積もる理論を構築するために、2007年に発表の検出器画素に記録されることで強弱差が小さくなった回折パターンから本来の回折パターンを回復させる物理数学の理論に、2014年に中迫雅由客員主管研究員らが開発した暗視野位相回復法の理論を援用することにした。これらを用いて、データ解析理論を再構築し、実用化のためのプログラムコードを作成して解析を行い、集光ミラーで加工しても、空間コヒーレンスがほぼ完全な集光XFELパルスが得られていることを確認した。さらに、XFELパルスごとに試料の回折に寄与しうるビームの大きさや、周囲にもたらす放射線損傷領域[6]を見積もることができた。
今回の成果により、集光XFELパルスの空間コヒーレンスを確認する方法が理論的にも、技術的にも確立されたため、他のXFEL施設においても、この手法が広く利用されると期待できる。
研究成果は、Scientific Reportsに掲載された。
(詳細は、www.riken.jp)