January, 16, 2018, Troy--シリコン太陽電池は、光吸収シリコンに入ってくる太陽光のエネルギーをとり入れる。重量とコストを減らすために、太陽電池は薄い。また、シリコンは可視光をよく吸収するが、太陽エネルギーの1/3を構成する近赤外スペクトルでは光の半分以下しか吸収しない。材料の深さが吸収を制限している。とは言え、深さではなく電池の幅に沿ってシリコンがエネルギーを吸収するように、太陽電池の光を水平に向かわせるとどうだろう。
レンセラー工科大学(Rensselaer Polytechnic Institute)の物理学、応用物理学、天文学教授、Shawn-Yu Linは、このように考えて、ナノ構造を作製した。こその結晶格子は、光がその材料に入ると光を曲げ、表面に平行に向かわせる、つまり光の進む方向を「界面屈折率に平行に」する。その構造は、ナノチューブ重複で構成されており、リンカーンログ(Lincoln Logs)で作られた3Dグリッドに似ている。同教授のプロセスを使って造られたフォトニックナノ結晶によって、究極の「光トラッピング」が可能になり、アプリケーションは薄膜太陽電池から、センシングや水分解のような光化学機能にある。
Linによると、これは光トラッピングが実現しようとしているものの核心にある、新しい種類の光-材料の相互作用である。
Nature Scientific Reportsに発表された実験結果では、同教授は、その効果を実証するために、二酸化チタンを使ってフォトニック結晶を作製した。これは弱い可視光吸収の材料である。900nm厚の二酸化チタンフォトニックナノクリスタルを用いた結果は、同じ材料の参照膜よりも、ある領域で1~2ケタ吸収が強化されることを示した。Linは、共同研究者Sajeev John、トロント大学物理学者の理論予測に基づいて、最初にシリコン、今度は二酸化チタンでナノ結晶を作製した。
光トラッピングは、光を所定の空間に閉じ込めるプロセスであるが,通常は光を他のエネルギー形態に変換するためである。あるアプローチでは、材料は、光を遅くするように設計される。光が材料の中で使う時間が多くなるようにするためである。Linの用いたアプローチでは、光は所定のパスから曲げられ、材料の中で進む距離が長くなる,この場合は二酸化チタンウエファの幅全体を進む。
光は,屈折率が異なる材料の中に入ると多少曲がる。水中、また他の多くの材料では、光はわずかに曲がるだけである。Linが作製した二酸化チタン結晶の原子配列では、可視光波長のスケールに一致し、光が格子の中に入ると空間の多点で同時に光が散乱する。その結果、光は空間、あるいは連続媒体を通るようには進めない。その代わりに、光は鈍角に曲がる、これは「負の屈折」として知られる現象である。すると光は材料の幅に沿って方向付けられる。
400~700nmの波長範囲で、可視光の流れを操作するために、Linは光のスケールに一致する、ナノチューブの完全対称立方を作製する方法を開発した。まず、二酸化チタン層を基板に堆積する。次に、薄い二酸化クロム層を堆積して光リソグラフィプロセスのマスクにする。これにより二酸化チタンにラインをエッチングする。完了すると溶剤をつかって残っている二酸化クロムを除去し、最初の「ログ」層が完成する。次の層を構築するために、二酸化シリコン層を堆積して、ログ間の空隙を埋める、表面は、最初の層の上面までフラットに研磨される。その全プロセスが、最初の層から正確に90°で繰り返される。
材料の1つの層は、1µm以下であるが、100㎜幅のウエファで製造され、材料の光吸収空間は10万倍になる。
「この発見は、非常に低吸収の材料を使うとき、パス長が著しく増強されることを証明した。この発見は、超薄構造における垂直吸収から水平吸収への画期的な変更である」とLinはコメントしている。