December, 14, 2017, Moscow--ロシア、スウェーデン、USの物理学グループが、極めてまれな光学効果を実証した。研究グループは、全く光吸収能力がない材料を使い、「事実上」光を吸収できるようにした。研究成果は、光メモリ素子の実現に向けて新たな地平を開くものである。
電磁放射、特に光吸収は電磁気学の主要効果の一つである。このプロセスが起こるのは、電磁エネルギーが吸収材料(例えば、電子励起)内で熱、つまり別種のエネルギーに変換されるときである。石炭、黒い塗料、ペンタブラックとして知られているカーボンナノチューブアレイは、入射光のエネルギーをほぼ完璧に吸収するので、黒く見える。他の材料、ガラス、水晶などは吸収特性を全く持たない、したがって透明に見える。
Optica誌に発表された理論研究で研究チームは、完全に透明な材料を完璧に光吸収するように見せることにより、そのように単純で直感的な考えを一掃することができた。それを達成するために、研究チームは散乱行列の特別な数学的特性を利用した。これは、入射電磁場とシステムによって散乱させられた入射電磁場とを関係づける関数。時間非依存強度の光ビームが透明な対象に当たるとき、光は吸収されるのではなく、その材料によって錯乱させられる、これは散乱行列のユニタリ特性によって起こる現象。しかし、入射ビームの強度がある方法で時間とともに変化するなら、少なくともしばらくの間、ユニタリ特性は崩壊する。特に、強度増大が急激(指数関数的)であるなら、入射光エネルギー全体は透明材料に累積し、そこから出られない。そういうわけで、外からは、その系は完全に吸収しているように見える。
その効果を説明するために研究チームは、薄い透明誘電体層を調べ、入射光の吸収に必要な強度プロファイルを計算した。入射波強度が指数関数的に増加するとき、光は透過も反射もされないことを計算で確認した。すなわち、実際に吸収能力が欠如しているにも関わらず、そのレイヤは完全に吸収しているように見える。とは言え、入射波の振幅の指数関数的増加が止まると(0になる)、レイヤのエネルギーは解放される。
研究成果は、光が普通の透明材料と相互作用する時にどのように振る舞うかについての一般的理解を広げるだけでなく、実用的なアプリケーションの幅を広げることにもなる。一例を挙げれば、透明材料における光の累積は、全く損失なく光情報を蓄積し、必要な時にそれを解放する、光メモリデバイスの設計に役立つかもしれない。