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NICT、窒化ニオブを用いた磁性ジョセフソン素子を世界で初めて実現

November, 16, 2017, 東京--NICTの山下太郎主任研究員らの研究グループは、世界で初めて、窒化ニオブを用いた窒化物超伝導体による新奇な磁性ジョセフソン素子の開発に成功した。
 ジョセフソン素子を用いた超伝導デバイスの動作には、外部から電流や磁場を加えて巨視的位相のねじれを発生させることが必要不可欠。今回開発した磁性ジョセフソン素子では、巨視的位相が自らねじれた状態を実現することができるため、従来必要であった電流や磁場を大幅に削減することができ、超伝導量子コンピュータをはじめとする様々な超伝導デバイスの高性能化に向けて大きなブレークスルーとなるものである。
 研究チームは、酸化マグネシウム基板上に結晶配向成長し、表面平滑性に優れた窒化ニオブ薄膜を用いることで、接合界面の精密な制御を行い、窒化物超伝導体による「パイ状態」磁性ジョセフソン素子を世界で初めて実現した。
 厚さの異なる磁性層を持つ複数個の素子を作製し、ジョセフソン臨界電流を測定した結果、磁性層がある膜厚範囲にある素子で、巨視的位相が180°ねじれるパイ状態を発現していることを実験的に確認した。
 通常のジョセフソン素子では、位相のねじれがない「0状態」が安定で、ジョセフソン臨界電流は温度上昇に対して単調に減少するが、磁性ジョセフソン素子では、磁性層の厚さや動作温度に対して、0状態とパイ状態が変化する。状態が変わるポイント(転移点)では、ジョセフソン臨界電流の温度依存性に、磁性ジョセフソン素子に特有のディップ構造が現れる。研究チームは、ジョセフソン臨界電流の温度依存性において、明瞭なディップ構造の観測に成功。これにより、作製した磁性ジョセフソン素子において、確かにパイ状態が生じていることを実証した。
 パイ状態では巨視的位相のねじれが生じているため、例えば、超伝導体のリングに磁性ジョセフソン素子を組み込むと、外部から電流や磁場を与えなくてもリング中に自ら電流が流れる。
 将来的には開発した素子を超伝導量子コンピュータや超伝導集積回路に組み込むことにより、巨視的位相制御に必要な外部電流やミリテスラレベルの磁場の大幅な削減が可能になり、消費電力や外来ノイズの低減に大きく寄与することが期待できる。
 究成果は、Physical Review Appliedに掲載された。
(詳細は、www.nict.go.jp)