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グリーンハウスガス放出減に寄与する微小チップベースメタン分光計

November, 7, 2017, Washington--地球から天然ガスを取り出す過程、あるいはそれをパイプラインで輸送する過程で、メタンが大気に放出される。メタンは、天然ガスの主成分であり、二酸化炭素よりも約25倍の温度上昇力があるグリーンハウスガスである。グリーンハウスガスは、極めて効率的に大気の熱エネルギーをトラップする。新しいチップベースのメタン分光計は、10セント硬貨よりも小さい。この分光計により、いずれ、効率的な、また広範囲にわたる漏洩モニタが容易になる
 IBM Thomas J. Watsonリサーチセンタの研究チームは、新しいメタン分光計を開発した。これは今日の標準的分光計よりも小さく、製造がより経済的である。Optica誌に、その新しい分光計の詳細が報告されており、それによると100ppm程度の濃度のメタンを検出できる。
 その分光計は、シリコンフォトニクス技術をベースにしている。つまり、コンピュータチップ製造に用いられる材料、シリコンで作られた光学デバイスである。コンピュータチップで使われる同じ量産方法を適用してチップベースメタン分光計を作れるので、その分光計は、筐体、バッテリ/太陽電源とともに、量産すれば数百ドルのコストと考えられる。
「今日の商用入手可能なメタン検出光センサのコスト、数万ドルと比較すると、チップ分光計の量産は大きな価値提案になる。さらに、可動部品はなく、精密温度制御の基本的要件もないので、このタイプのセンサは、ほぼメンテナンスなしで何年も動作可能である」とIBMリサーチチームリーダー、William Greenは説明している。
 新しいデバイスは、吸光度計として知られるアプローチを利用する。これは計測される分子によって個別に吸収される波長のレーザ光を必要とする。従来の吸収分光計セットアップでは、レーザは自由空間を進んでディテクタに届く。ディテクタに届いた光の計測により、空気中の関心のある分子によってどの程度光が吸収されたかが分かる、またその分子の濃度計算にも使用可能である。
 新しいシステムは類似のアプローチを利用するが、自由空間セットアップの代わりに、レーザは狭いシリコン導波路を進む。導波路は、16平方センチのチップ上に10㎝長の蛇行パタンを形成している。光の一部は導波路内にトラップされるが、光の約25%はシリコンの外の周囲空気に広がり、そこでセンサ導波路近傍を通る微量分子と相互作用することができる。研究チームは、メタン検出に近赤外光(1650nm波長)を使った。
 デバイスの感度を高めるために研究チームは、ノイズや疑似吸収信号の一因となる要素を注意深く計測し制御し、分光計の設計を微調整し、望ましい結果が得られるように導波形状パラメータを決定した。
 新しい分光計の性能と標準的なフリースペース分光計とを比較するために、研究チームはデバイスを環境チャンバに置き、制御された濃度のメタンを放出した。チップベースの分光計がフリースペースセンサに匹敵する精度であることを研究チームは確認した、ただしチップベースでは、フリースペース設計と比較して空気と相互作用する光は75%少ない。さらに、チップセンサの基本的感度は、メタン濃度の最小の識別可能変化を計測することで定量化できた。このことは、他の研究室で開発されたフリースペース分光計に匹敵する性能であることを示している。
 「シリコンフォトニクスシステム、特にセンシングに屈折率変化を利用するものは、以前に研究されていたが、われわれの研究の画期的な部分は、少濃度のメタンからの極めて弱い吸収信号を検出するためにこのタイプのシステムを使うことであった。また、われわれのセンサチップのノイズと最小検出限界の包括的な分析も画期的である」とリサーチメンバー、Eric Zhangはコメントしている。
 分光計の現行バージョンは、光が光ファイバから出入りする必要がある。しかし、研究チームは光源とディテクタをチップに組み込むことに取り組んでいる。それは、ファイバ接続不要の電気デバイスの実現である。来年、研究チームは、他の市販センサを含む大きなネットワークにチップベースの分光計を置いて、フィールド試験を始める計画である。