November, 1, 2017, Cambridge--市販のプリンティング技術を使って光をトラップし活用できるほどに小さな構造を描ける微視的「ペン」は、センシング、バイオテクノロジー、レーザ、また光と物質との相互作用の研究に利用できる。
プリンティングベースのアプローチは、ケンブリッジ大学と日立ケンブリッジ研究所の研究者が共同開発した。これは高分解能インクジェットプリンティングとナノフォトニクスを結びつけたものであり、このような組合せの実証成功は初めてである。研究成果は、Advanced Materialsに発表されている。
Dr. Vincenzo Pecuniaの研究は、広範なアプリケーションのためにプリントできるオプトエレクトロニック材料に焦点を当てている。研究グループは先頃、電気流体力学ジェットをベースにしたプリンタを手に入れた。圧力や熱の代わりに、このタイプのプリンタは、インクに電圧を印加し、遙かに小さなノズルからインクを押し出す力を作り出す。こうして、従来のプリンタによる液滴よりも10~100倍小さな、超微小液滴を生成できる。
「両分野を結びつけるこれまでの試みは、従来のインクジェットプリンティング技術の限界に突き当たっていた。光の波長に匹敵するサイズのものを直接堆積できないからである。しかし電気力学インクジェットプリンティングにより、われわれはこの限界を超え出ることができた」とPecuniaはコメントしている。
研究チームは、フォトニック結晶上に超微小液滴をプリントすることができた。そのインク液滴は十分に小さいので、微細なペンで、光をトラップするために局所的に結晶の特性を変えるかのようにオンデマンドで描ける。この技術により、多くのタイプのパタンをフォトニック結晶上に、広い範囲にわたり高速に形成できる。加えて、そのパタンは、あらゆる種類のプリント可能な材料で造ることができ、その方法はスケーラブルで、低コスト、またフォトニック結晶は、インクが簡単に洗い流せるので再利用できる。
日立ケンブリッジラボラトリのDr Frederic Brossardは、「この製造技術は、基礎科学と応用科学において多様な機会を開く。潜在的な方向は、ウイルス、ガン細胞などの微量生体分子を検出する高密度の高感度センサ作製である。また、新しい材料で、光と物質の非常に強力な相互作用を必要とする基礎的現象の研究で極めて有用なツールとまるものもある。オンデマンドレーザの作製にも有用なツールとなり得る。最後に、この技術により、光をガイドする非常にコンパクトな光回路が実現可能である。フォトニック結晶テンプレートを利用しインクジェットプリンティングによって変更可能な光回路が作れる」と話している。