October, 27, 2017, Santa Cruz--カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UC Santa Cruz)電気工学教授、材料科学者、Nobuhiko Kobayashiと、UC Santa Cruz 天文学者 Andrew Phillips、 Michael Bolteは、マイクロエレクトロニクス業界で広く用いられている技術を適用し、大型銀ベース望遠鏡ミラーの保護コーティング開発で協働する。
Phillipsによると、ほとんどの天文望遠鏡ミラーは反射層にアルミニウムを使用しているが、銀の反射特性の方が優れている。「銀は、最も反射特性が優れた材料であるが、簡単に変色し腐食する。ミラーの光学特性を損なうことなしに、何も銀に届かないようにするバリア層が必要である」。
既存の望遠鏡は、アルミニウムの代わりに銀のミラーとして、それをリコーティングすることで効率が大幅に改善される。「われわれの望遠鏡を効果的に大型化するための最も安価な方法である。より大きな望遠鏡を必要とする理由は、より多くの光を集めることである、したがって、ミラーがより多くの光を反射すると、望遠鏡が大きくなったのと同じである」とBolteは説明している。
UC Santa Cruzで開発中の新しいコーティング技術は、それを実行可能にする。研究チームは、原子層成長法(ALD)という技術を利用している。ALDは、一度に1分子層を、優れた均一性と厚さ制御で、基板表面に対して適合するように、徐々に材料の薄膜を形成する。予備的研究でALDは、従来の物理的堆積技術よりも遙かに優れた保護層を銀ミラーサンプルに成長させた。
「ALDのパフォーマンスは著しく優れている。問題は、エレクトロニクス産業で使われているシステムがシリコンウエファ用に設計されていることである、したがって、望遠鏡ミラー用としては小さすぎる」とPhllipsは指摘している。
ALDシステムを使った予備研究の結果、研究チームは望遠鏡ミラーを収容できるもっと大きなシステムを設計することにした。チームは、特許を申請し、システム構築で協働する装置ベンダを見つけた。Structured Materials Industries(SMI)は、マイクロエレクトロニクス業界向けに薄膜堆積システムを製造している。
新システムは7月に納入され、最初のテストでは性能は良好だった。研究チームは、同システムを使って、それが望遠鏡ミラーや他の大きな基板に使えることを実証し、続いてコーティングを完璧なものにする。システムは、最大直径0.9メートルのミラーを収容することができ、もっと大きなミラーあるいはミラーセグメントを収容するために拡大設計も可能である。ハワイのツインKeck Telescopesの10メートル主鏡は、1.8m径の六角形セグメントで構成されており、Thirty Meter Telescope(TMT)のミラーセグメントは、直径1.4mとなる。
Bolteによると、TMTミラーセグメントに銀を使いたいという考えが、研究チームの新しいコーティング技術開発の主要な原動力である。とは言え、その技術は既存の望遠鏡のミラーのリコートにも使用できる。アルミニウムコートのミラーは、それが再度コーティングを必要とするまでに3~5年程度の使えるが、そのプロセスに望遠鏡が一時的に使えなくなる。
当座、研究者は物理的堆積プロセスを使って、銀を保護する最初のバリア層とともにミラーブランクに銀コーティングを行っているが、ミラーはALDシステムに移行することになる。ALDは、最終バリア層に利用される。
「現状では、ハイブリッドプロセスであるが、銀コーティングでもわれわれはALD開発の方向に進んでいる」とPhillipsは話している。
(詳細は、www.ucsc.edu)