October, 25, 2017, 大阪--NEDOプロジェクトにおいて大阪大学は、世界で初めて、青色半導体レーザの高輝度化により純銅を積層造形できる3Dプリンターを開発した。
この成果により、これまでレーザを用いては溶融が困難であった高電気伝導性と高熱伝導性を有する純銅の積層造形が可能となり、航空・宇宙・電気自動車等の産業で必要な加工部品への応用が期待できる。
研究成果は、米国アトランタで開催される国際会議「The International Congress on Applications of Lasers & Electro-Optics(ICALEO)」(10月22-26)、2018年1月30日~2月1日まで米国サンフランシスコで開催される国際展示会「Photonics West 2018」での公開を予定。
3Dプリンターを用いた積層造形技術は、他の加工法では作れない複雑な形状の造形、多様化する顧客ニーズに対応した究極の少量多品種生産の実現等、ものづくりに革命を起こす潜在能力を持ち、さまざまな分野における実用化が期待されている。特に、純銅素材の製造・加工については、航空・宇宙・電気自動車等の多くの産業から期待されている一方で、近赤外線レーザを用いた従来の3Dプリンターでは純銅素材の溶融などに課題があった。
NEDOプロジェクトにおいて、大阪大学接合科学研究所の塚本雅裕教授らの研究グループは株式会社島津製作所と共同で、日亜化学工業株式会社と株式会社村谷機械製作所の協力を受け、世界で初めて、青色半導体レーザの高輝度化により純銅を積層造形できる3Dプリンターを実現した。
まず、純銅粉末を溶融させるために必要なパワー密度を得ることができる出力100Wの高輝度青色半導体レーザを開発。波長450nmの青色半導体レーザ光を、コア径100µmの光ファイバから出力することで、直径100µmのスポットに容易に集光することが可能となる。出力100W時の直径100µmのスポットにおけるレーザ光のパワー密度は、1.3×106W/cm2となり、純銅粉末を溶融させるのに十分なパワー密度を実現できた。
続いて、この高輝度青色半導体レーザの集光ヘッドを配置したシステムを筐体内に収めたSLM(Selective Laser Melting)方式3Dプリンターを開発した。この3Dプリンターにより、純銅の積層造形に成功した。この3Dプリンターは、ガルバノミラーを使用せず、集光ヘッドを直接稼働させる構造にすることで、低コスト化を実現している。
この成果により、従来の近赤外線レーザを用いた3Dプリンターでは困難であった純銅をはじめとする材料の積層造形など、航空・宇宙・電気自動車等の産業に必要な加工部品への応用が期待される。また、SLM方式3Dプリンターは、LMD(Laser Metal Deposition)方式3Dプリンターよりも造形精度が高いので、複雑な構造の流路を持った純銅ヒートシンク等への応用も期待される。
(詳細は、www.nedo.go.jp)