October, 4, 2017, 東京--東京大学大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センターの岩佐義宏教授(理化学研究所創発物性科学研究センター 創発デバイス研究チーム チームリーダー兼任)、同研究科附属量子相エレクトロニクス研究センターの井手上敏也 助教、同研究科物理工学専攻の恩河大 大学院生らの研究グループは、大阪大学産業科学研究所の張奕勁 研究員と共同で、新たな二次元物質として注目される二硫化モリブデン(MoS2)の単層を用いて、入射光の偏光情報を保った励起子を伝達し、選択的に空間分離することが可能な新現象(励起子ホール効果)を発見した。
フォトダイオードやLEDを構成する半導体の受光・発光において、励起子といわれる複合粒子が主要な役割を果たす。励起子は素子の電気特性と光を結びつける概念として20世紀半ばから研究が続いてきたが、その光のエネルギー・情報を受け取った励起子そのものを伝達・制御し、光エレクトロニクスにつなげようとする研究は極めて少なかった。一方で、固体中の様々な粒子の軌道を曲げて制御するホール効果と呼ばれる現象は広く研究されてきたが、励起子については全く報告がなかった。
今回は単層二硫化モリブデン内の励起子が光の偏光情報と結合することに着目し、その特異な励起子が磁場を加えなくてもホール効果を示すことを発見した。これは光の偏光情報を固体中で励起子として選択的に輸送できることを示しており、励起子を直接的に用いた新たな光エレクトロニクスなどの基礎となりうる結果である。
研究成果は、Nature Materialsに掲載された。